「家族の物語を映すフォトスタジオ、Petitcoeurの冒険」 松山瞳さん【ガチアダチ サミット episode.7】

ガチアダチ サミット

「トネリライナーノーツ」が毎月第3日曜に足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」で主催しているイベント「オオシマナイト」で実施する公開取材が、「ガチアダチ サミット」です。

足立区千住曙町にある古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」フォトグラファーの松山瞳さん
足立区千住曙町にある古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」フォトグラファーの松山瞳さん

「ガチアダチ サミット」のepisode.7となる今回は、足立区千住曙町にある古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」フォトグラファーの松山瞳さんに登壇していただいて、「家族の物語を映すフォトスタジオ、Petitcoeurの冒険」をテーマにお話を伺いました。聞き手は、トネリライナーノーツ編集長の大島俊映が務めます。
(取材日:2025年1月19日)

子どもに愛を、ママとパパに安心感を届けるフォトスタジオ

「ガチアダチ サミット」登壇者の松山さん(右)と、聞き手の大島(左)
「ガチアダチ サミット」登壇者の松山さん(右)と、聞き手の大島(左)

――簡単に自己紹介をお願いします。

松山さん 足立区千住曙町の京成関屋駅と牛田駅から徒歩3分ぐらいの場所にある古民家フォトスタジオ「Petitcoeur(プチクール)」でフォトグラファーをしている松山瞳と申します。

ざっくりと経歴を話すと、初めはウエディングドレスを作っていてたんですが、出産後は育児もあってウエディングドレスを作るのが難しくなってきたので、自分の子ども用のドレスを作っていました。すると、スタジオ受けが良かったので、「スタジオ受けのいいドレスは、どんなのかな?」と思って写真スタジオに勤務し始めたのがキッカケでそのままカメラマンになり、気付いたらフォトスタジオの物件を借りていました。

――「Petitcoeur」にはどういうお客さんが撮影に来られることが多いんですか?

松山さん 1番多いのは1歳のお誕生日撮影が多くて、その次は七五三の撮影ですね。新規の方とリピーターの方が半々くらいで利用していただいています。

古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」フォトグラファーの松山瞳さん
古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」フォトグラファーの松山瞳さん

――写真の納品はデータで行っているんですか?

松山さん 以前はデータのみをお渡ししていましたが、最近はアルバムのお渡しもできるようになりました。そこにはとても良い循環があって、私の面倒をずっと見てくださっていたアルバムデザイナーの方が、アルバムを作りたいママさん向けに養成講座を開催して、その養成講座を卒業したママさんが今は「Petitcoeur」のアルバム制作をしてくださっているんです。

撮影があって時間の余裕があまりないしセンスを持ち合わせていなかった私と、アルバム制作を仕事にしたいと思っているママさんがマッチングして、去年からアルバムの納品が実現できるようになりました。

松山さんが撮影した子どもの写真
松山さんが撮影した子どもの写真

――データだけで渡していた頃と、アルバムも渡している今とでは、お客さんの反応に違いはありますか?

松山さん 私のモチベーションの違いが大きいですかね。親になると子どもに全力で愛情を注ぐけど、子どもは1歳から3歳くらいの頃の記憶ってあまりないですよね?そこがすごく勿体ないなと思っていたんです。

でも、その頃の思い出をアルバムという形に残せば、子どもが10歳くらいになった時にアルバムを見返して親の愛に気付いてくれます。「親の愛って、ちゃんと子どもに伝わるんだよ」というのをお客さんに言えるようになったのが大きいですね。

大島家が「Petitcoeur」で撮影後にスライドショーを見ている様子
大島家が「Petitcoeur」で撮影後にスライドショーを見ている様子

――家族の物語の時間をプロダクトにしているんですね。大島家も「Petitcoeur」で家族写真を撮ってもらっていますが、撮影後にスライドショーをやられれているのはどういう経緯ではじめたんですか?

松山さん 撮影に来られたご家族が安心して家に帰ってもらいたいんですよね。何万円という単位で撮影込みのサービス料をいただくんですが、その金額って家庭の中では決して安くないと思うんです。

その中で、撮影に来られたご家族からすると、どんな感じで撮れたんだろうかと分からないで帰るのと、目で見てから帰るのとでは全然違うだろうなと思って、スライドショーを始めました。

2度の出産を経て変化していったキャリア

足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」にて
足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」にて

――先ほどの経歴の話にも少しありましたが、新卒でウエディング関係の仕事をしていたんですか?

松山さん 新卒では販売員の仕事をしていました。というのも、高校のときから私は服飾の勉強をしていてVMDというディスプレイの仕事をしたかったんですが、VMDの仕事に就くには販売員の経験が必要だったんです。

けれど、モノを作れないのがやっぱり無理だったので販売員は1年でやめて、そこからはデザインフェスタに出たり、フリーで結婚式場で働きながらお客さんをとってウエディングドレスを作ったりという生活をしていました。

「Petitcoeur」の衣装の一部
「Petitcoeur」の衣装の一部

――なぜウエディングドレス関係の仕事に転職されたんですか?

松山さん ゼミでウエディングドレスを作っていたからというのと、やっぱり家族のスタートって素敵だなと思ったからですかね。

ウエディングドレスですごく覚えているのが、私の姉が結婚する時のことです。姉のドレスを作ったんですけど、時間の都合で姉にドレスを届けられなくて姉の旦那さんに届けたら、旦那さんがギャンギャン泣いたんですよね(笑)その時に、なんて素敵な仕事なんだろうって思いました。

「Petitcoeur」をはじめるまでの経歴について話す松山さん
「Petitcoeur」をはじめるまでのキャリアについて話す松山さん

――松山さんは自分の身の周りで起こったことからキャリアを決めてるのかなと聞いていて思ったんですけど、今の写真スタジオで撮影の仕事を始める過程はどんな感じだったんですか?

松山さん 10年くらい前、私の親友が産後に鬱っぽくなってしまった時があったんですけど、その頃は私も子育てをしていたので助けきれなくて、少し心残りだったんです。

そのあと、2人目を産んだ時に私も鬱のギリギリの状態になったんですが、可愛い子ども服を作って仲間に撮影してもらうという時間が私を元気にさせて、気持ちを持ち直すことができたんですよね。ママが元気になるって、こういうことなんだなと感じたんです。

それで、非日常的な体験やちょっと違う環境に身をおくことで、可愛い自分の子どもがちゃんと可愛く見えることがすごく心にも良いんだなと感じたので、カメラの勉強を始めました。

「Petitcoeur」について伺う大島
「Petitcoeur」について伺う大島

――なるほど。松山さんの中で、お子さんが生まれたことがキャリアチェンジの節目になってるんですか?

松山さん そうですね。1人目が産まれてウエディングドレス制作に難しさを感じ、自分の子ども用のドレスを作っていたんですが、その受けが良くなかったら恐らく今の道に行かなかったですね。

2人目が産まれてからは、私にとっては少し暇だったので、カメラの勉強をしようと思った、という流れですね。2人目が産まれていなければ、もっと衣装の方で忙しくしていたかもしれません。

――カメラをまた始められて、どこに面白さを感じてたんですか。

松山さん キラキラした可愛い赤ちゃんを写真で撮れた時に、私もテンションが上がるし、親御さんもテンションが上がって嬉しくなりますね。

独立しても軽やかに、ママを喜ばせる仕事を

公開取材「ガチアダチ サミット」に参加してくださったみなさん
公開取材「ガチアダチ サミット」に参加してくださったみなさん

――独立してフォトスタジオを運営するのは大きい挑戦だと思うんですが、その時の想いを聞かせてください。

松山さん 私はハウススタジオで勤務したあと、独立して自宅でリビングスタジオをオープンしたんですが、自宅で仕事をすると子どもたちのおもちゃの片づけなどで大変だったんですよね。

そんな中、ここ古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」で写真展をした時に物件の話をもらって、ご縁があり1棟目の場所を借りることができました。そのあとすぐにコロナ渦に入ったんですが、物件を借りていたために補助金がおりたので、細々と運営することができました。

古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」
古民家フォトスタジオ「Petitcoeur」

――そのあと、2棟目の現在の場所に移転されたのは何かキッカケがあったんですか?

松山さん 1棟目は、寒かったんですよね。なので、もう少し良い条件の場所はないかなとふらふら探していたら、マストな場所があったんです。

床が抜けそうではあったんですけど、使いやすそうだなと思ったので、内見が終わって鍵を返す時に「借ります」と伝えました。不動産会社の方も驚いていましたね(笑)

ノリと縁を大切にしているふたり
ノリと縁を大切にしているふたり

――結構ノリで生きてる感じがシンパシーを感じます(笑)実際に借りてみて、変化はありましたか?

松山さん 今の物件は2階建てなので広くなり、イベントなどもできるようになりました。あとは、人との繋がりが増えましたね。去年から人を雇うようになり、週1、2でアシスタントをしてくれている方がいるんですが、その人のことが大好きで辞めないでほしいから、仕事を取ってくるくらいです。

――アシスタント業務はどういうことをやってもらうんですか?

松山さん その方だからお任せできることなんですが、衣装を縫ったり作ったりするのを今までは自分でやっていましたが、今はその方にお願いしています。あと、髪の毛のセットも上手なのでお願いしてます。

――身近な人を大切にしていていいですね。

「オオシマナイト」参加者と公開取材「ガチアダチ サミット」登壇者の松山さんが交流する様子
「オオシマナイト」参加者と公開取材「ガチアダチ サミット」登壇者の松山さんが交流する様子

――松山さんは足立区の創業プランコンテストでグランプリ取られてるんですよね?

松山さん そうなんですよね。昼寝してたら足立区の人から電話あって「1位ですよ」って。書類の準備など大変な事もありましたが、賞金もいただけました(笑)

――今後の「Petitcoeur」のビジョンを教えてください。

松山さん お客さまに対するビジョン、自分に対するビジョンがあります。

お客さまに対するビジョンは、喜ぶママを増やしたいですね。ママが笑ってる家庭はあたたかい、ママが元気だと家族は元気だと私は感じるんです。それは大体パパがめっちゃ良い人でもあるんです。そういう家庭を支えたいなって思いますね。

自分に対するビジョンは、お酒もおしゃべりも好きなので、写真を通してできたコミュニティで将来バーをやりたいんです。

キャリアのアドバイスをする松山さん
キャリアのアドバイスをする松山さん

――いいですね。せっかくなので、今日も聞いてくれている大学生や若い方にキャリアのアドバイスってありますか?

松山さん 先日、中学1年生のお客さんに「カメラマンになりたいんです、どうしたらなれますか?」と聞かれて、「カメラマン以外のことを勉強しな。カメラはもういつでも勉強できるから」と答えました。今はカメラマンが飽和している時期だし、カメラの仕事1つでは生きていくのは難しいので。

カメラマンに限らず、視野を広く持って、自分の好きな事やできることを増やして、「これだったら私のキャラが立つ」というものがあればいいんじゃないかなと思います。

――松山さんも「服づくり」と「フォトグラファー」という掛け算で、今のお仕事に繋がっていますもんね。今日はありがとうございました。

Petitcoeur
ホームページ
https://petit-coeur-baby.com/

「ガチアダチ サミット」登壇者の松山瞳さん(右)と、聞き手の大島俊映(左)
「ガチアダチ サミット」登壇者の松山瞳さん(右)と、聞き手の大島俊映(左)

登壇者= 松山瞳さん

聞き手=大島俊映(トネリライナーノーツ編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/

編集補佐=しまいしほみ(トネリライナーノーツ 編集者)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/shimai/

撮影=山本陸(トネリライナーノーツ カメラマン)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/riku/