「muneposi タオル」を手に取り学ぶ“自分らしくいる選択肢を持つ”ということ【シマイクエスト 第2話】

シマイクエスト

「トネリライナーノーツ」編集者のしまいしほみが、実際に体験したことで得た発見や感じた思いを書き綴るのが「シマイクエスト」です。

「muneposi」代表の渡部和香子さん(左)と、プロダクトマネージャーの三上美紀さん(右)と、取材者のしまいしほみ(中央)
「muneposi」代表の渡部和香子さん(左)と、プロダクトマネージャーの三上美紀さん(右)と、取材者のしまいしほみ(中央)

「シマイクエスト」の第2話は、乳がん手術跡や胸にコンプレックスを持っている方など誰もが使いやすい“入浴タオル”を開発・販売をする「muneposi」代表の渡部和香子さんと、プロダクトマネージャーの三上美紀さんにお話を伺い「muneposi タオル」の体験談をお届けします。
(体験日:2024年12月)

お互いに悩みを打ち明け誕生した「muneposi」

とても明るい「muneposi」代表の渡部さんとプロダクトマネージャーの三上さん
とても明るい「muneposi」代表の渡部さんとプロダクトマネージャーの三上さん

「muneposi」は、2022年に事業を展開し、荒川区東日暮里にあるファッション起業の支援拠点「イデタチ東京」を拠点に、乳がん手術跡や胸にコンプレックスを持っている方など、誰もが使いやすい“入浴タオル”を開発しています。

“自分の心(胸)が、ポジティブでいっぱいに!ハッピーになりますように!”そんな想いを込めて「muneposi」と名付けられ、商品はオンラインショップやセレクトショップで販売されています。

「muneposi」代表の渡部さん
「muneposi」代表の渡部さん

もともと、2人はお子さん同士が同じ幼稚園に通うママ友でした。2018年に三上さんは乳がんを患い、当初はその事実を周囲に隠していました。しかし、リハビリのために通っていたジムで渡部さんに偶然会い、乳がんについて打ち明けます。

そんな中、三上さんがジムでシャワーを浴びる際に傷跡を隠すことに苦労していた一方で、シャワーを避けて帰る渡部さんの姿がありました。「なんで渡部さんは手術の傷跡が無いのにシャワーを浴びて帰らないんだろう?」と疑問を抱いた三上さんでしたが、話していくうちに実は渡部さんも体にコンプレックスがあってシャワーを避けていたと知り、2人は胸の悩みという意外な共通点があることがわかりました。

プロダクトマネージャーの三上さん
プロダクトマネージャーの三上さん

「通常のタオルでは短くて傷跡をうまく隠せないんだよね」
「水を吸い込むと体系カバーが難しいよね」
「もっと可愛いタオルがあったらな」
そんな会話がキッカケで、同じような悩みを抱えている人がもしかするといるかもしれないと考え、「ないなら、作ろう!」と、2人の想いを形にする商品の開発がはじまりました。

こだわり抜かれた「muneposi タオル」の機能性

「muneposi タオル」をかけたしまい
「muneposi タオル」をかけたしまい

「muneposi タオル」を私も実際に首からかけさせていただきました。まず目を引いたのは、デザインの可愛らしさ。カラフルな小花のタオルは心が華やかになり、他にもシックな色で落ち着いたデザインもありバリエーションが豊富です。

さらに驚いたのは、軽さです。リップル生地という、子どもの浴衣や甚平に使用されるさらっとした素材を使っているのでとても軽いんです。

また、普通のタオルは濡れると体のラインが目立ちやすくなるのに対し、表面が少しぼこぼこした素材のリップル生地は濡れてもくしゃっとなりにくいのが特徴だそうです。術後の敏感な肌への配慮もあり、肌触りのいい裏地選びにもこだわって作られていました。

可愛い柄と機能性のいい生地を使った「muneposi タオル」
可愛い柄と機能性のいい生地を使った「muneposi タオル」

「muneposi タオル」には首元にも工夫がありました。「体を隠したいからタオルを首にかけておきたいが、首に泡が溜まって不快になり、結局タオルを取らざるを得ない」という自身の経験をもとに改善を繰り返し、首元にはデザインの邪魔にならず機能性を持たせたメッシュ生地を採用したそうです。

さらに、前にはボタンがついているのでズレにくく、安心感があるのも魅力的でした。

お風呂に入った時の「muneposi タオル」の利便性を話してくださっている様子
お風呂に入った時の「muneposi タオル」の利便性を話してくださっている様子

「muneposi タオル」は入浴以外の場面でも活用されています。例えば、放射線治療の際に裸で検査台に乗る必要がある病院では「muneposi タオル」を検査着としてすでに導入されているそうです。

「muneposi タオル」を子どもや教育現場にも

「muneposi」の2人
「muneposi」の2人

他にも私がいいなと思った使用例は、思春期のお子さんの利用です。修学旅行の際にみんなでお風呂に入るのをためらうお子さんに親から渡してあげたり、小学校の健康診断で順番待ちをする場面でも裸を隠すために使ったりすることで、子どもはもちろん、親としても安心感を得られるのではないかと思います。

私が実家に住んでいた中学生の頃、実際に夏のお風呂上りに薄いTシャツを直接肌の上から着る抵抗感と、暑いから下着もタオルも身につけたくないという悩ましいジレンマがあった経験があるので、このようなタオルがあれば嬉しかったなと思い返しました。

思春期の子供の利用について伺いました
思春期の子供の利用について伺いました

もう1つ、このような話も伺いました。過去に、お子さんと同年代の修学旅行中の学生が大浴場で盗撮被害にあったというニュースを知った時、お子さんに伝えるとショックを受けトラウマになってしまう可能性もあるので、親としてどう伝えるかを悩んだそう。そこで、お子さんに何気なく、「修学旅行でお風呂に入るときはタオルで隠す?それとも堂々と入る?」と聞いたところ、「隠さない」という返答だったそうです。

それは「隠さないことが正しい」と思いこんでいる可能性もあるのではと思い、お子さんの意思を大切にしながらも「隠さないことも、隠すことも正しいんだよ」と伝えたうえで、自分を守る選択肢の例をお子さんに与えたそうです。

子どもたちを守る方法のひとつにもなる話す渡部さんと三上さん
子どもたちを守る方法のひとつにもなる話す渡部さんと三上さん

教育に関わる大人が選択肢を知っていることで、子どもたちを守ることにつながるのではないかというお話にとても納得しました。

2人は、「muneposi タオル」がプライベートゾーンを守る教育にも役に立てばいいなという想いがあり、いろんな形でアプローチしていきたいと話していました。

「muneposi」のこれから

商品と一緒に想いも届けたいと話すおふたり
商品と一緒に想いも届けたいと話す2人

「muneposi タオル」の製作を通じて癌の傷跡やコンプレックスに悩む方々と繋がる中で、“隠すこと”が目的ではなく、“自分らしくいられる選択肢を持つこと”が大切だと再認識したそうです。

乳がん経験者の中には傷を誇りに思い堂々と見せたい方もいれば、隠したい瞬間がある方もいるはずなので、気持ちに寄り添い、使う・使わないを選べる選択肢を提示していきたいと考える三上さん。また、何かしらの“固定観念”が自身を苦しませ悩みの解決を妨げているのかもしれないとも考える渡部さんは、「固定観念を押し付けることはせず、自分の気持ちと向き合える状況をつくりたい」と話します。

自分らしくいられる手段のひとつとして、「muneposi タオル」という選択肢があると知ってもらいたいと2人は考えています。

しまいが取材をする様子
しまいが取材をする様子

「がんになっても、病気になっても、それでも人生は続いていく」

私はこの言葉がとても印象に残りました。病気になり死ぬかと思ったけど生きていられた喜びがある一方で、「せっかく温泉に誘ってもらったのに、手術の傷あとを理由に断るのは申し訳ない」のような葛藤をする生活が増え、三上さんは乳がん罹患を機に何気ない日常の1つ1つにこれまでとは異なる価値を感じるようになったとのこと。

そのような葛藤と向き合いながら生活をしている方々の何か役に立つように、「muneposi タオル」を通じて日常に彩りがつくれるように、今後は“人とつながり話せるコミュニティづくり”にも力をいれていきたいそうです。

取材後にみんなで集合写真
取材後にみんなで集合写真

「入浴タオルを制作する中で、今まで見えてなかった新たな世界を見たことで成長させてもらったので、私たちも多種多様な価値観を受け入れていきたい」と話す2人。「商品を売るだけでなく、想いも一緒に届けたい」――そんな想いに感銘を受けて、これからの「muneposi」の展開がより楽しみになりました。

muneposi
https://munecom.base.shop/

「しまいばなし」執筆者のしまいしほみ

文=しまいしほみ(トネリライナーノーツ 編集者)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/shimai/