「らんたん寮」で気付く“安心できる住まい”と“自分に向き合う時間”の大切さ【シマイクエスト 第4話】

シマイクエスト

「トネリライナーノーツ」編集者のしまいしほみが、実際に体験したことで得た発見や感じた思いを書き綴るのが「シマイクエスト」です。

「らんたん亭」代表の中島正行さん(右)と、取材者のしまいしほみ(左)
「らんたん亭」代表の中島正行さん(右)と、取材者のしまいしほみ(左)

「シマイクエスト」の第4話は、足立区梅田にあるアートコミュニティスペース「らんたん亭」代表の中島正行さんにお話を伺い、足立区舎人に新設したシェアハウス型コミュニティスペース「らんたん寮」の体験談をお届けします。
(体験日:2025年8月)

中長期滞在ができるシェアハウス「らんたん寮」

取材は足立区舎人にある「らんたん寮」にて
取材は足立区舎人にある「らんたん寮」にて

「らんたん寮」は足立区の舎人駅から徒歩5分ほどの場所にある、宿泊ができるシェアハウス型のコミュニティスペースで、18歳~30歳の若者が1ヵ月~6ヵ月間滞在できます。

そんな「らんたん寮」を設立したのは、足立区梅田にあるアートコミュニティスペース「らんたん亭」です。彼らは創作や表現ワークショップ・展示イベントを開催したり、子ども食堂や居酒屋のような居心地のよい時間とつながりを大切にする居場所を運営したりして、キッカケを生むことを目的とした場所をつくっています。

DIYで居心地のいい空間に仕上げられた「らんたん寮」
DIYで居心地のいい空間に仕上げられた「らんたん寮」

「らんたん寮」が設立された背景には、「らんたん亭」を訪れる若者から見えてくる、住まいに関する課題がありました。「家に帰りたくない」「家を出たいが、金銭的な問題がある」などさまざまな課題を耳にして、“食”だけでなく“住”の重要性も感じたという代表の中島さん。

そこで、中島さんはボランティアメンバーとともに、自分たちができること・目指すことについて改めて話し合いを重ねました。その結果、「緊急的な支援が必要な若者には専門的な機関につなぎ、必要な支援を受けてもらう。一方で、私たちは支援を目的にするのではなく、スローガンである“自分と向き合い、人とつながる、対話の広場”を軸に、人が人らしくいれる社会を模索できるような場所を作ることが役割ではないかという結論になりました」と中島さんは話します。

「らんたん亭」が目指すことについて話す中島さん
「らんたん亭」が目指すことについて話す中島さん

このような背景から、社会との接点を見失いがちな若者や、キャリアブレイク中の若者、暮らしの選択肢に悩む若者に対して、“安心できる住まい”と“出会い・対話・表現ができる場”として「らんたん寮」が設立されました。

「らんたん寮」を宿泊ができるシェアハウス型にしたことで、必然的に対話が生まれやすいという特徴がある反面、他人と共に暮らすことは生活リズムや価値観の違いなどから問題が起こることも想定されます。それについて中島さんは、「運営しながら、みんなが住みやすい環境づくりやルールメイキングなどを利用者たちと一緒に考えていきたいです」と話します。

集う1階、くつろぐ2階

地域の方も利用可能な1階「街とつながるスペース」
地域の方も利用可能な1階「街とつながるスペース」

1階は、「街とつながるスペース」として地域の方も利用が可能です。子ども食堂、作品展示、手作り雑貨の販売、“誰かの人生を変えた本”に出会える「人生きっかけ図書室」、ワークショップ「寺子屋」など、多彩な活動が行われます。「らんたん亭」では開催が難しかった音楽系のイベントも、「らんたん寮」では可能になりました。

「対話イベントやワークショップをホームパーティ感覚で開催して、ご近所の方々と気軽につながっていけたらと思っています」と中島さんは話します。

「らんたん寮」2階の「滞在スペース」
「らんたん寮」2階の「滞在スペース」

2階は、シェアハウス利用者が使用する「滞在スペース」で、男女の部屋にそれぞれ2床ずつのベッドが置かれています。

「女子部屋はベッドを1台ずつ置き、カーテンを設置したのでプライバシーを守れるようにしました」と中島さん。

2階のフリースペース
2階のフリースペース

また、シェアハウス利用者のフリースペースとなる部屋もあります。「1階でのイベントに参加してもいいし、参加せずに2階のフリースペースでくつろいだり、コワーキングスペースのように作業してもいいし、好きに使ってもらいたいです」と、実際に利用される様子を思い描きながら中島さんは話します。

目指すのは、安心を軸とした対話の場

これからの「らんたん寮」について伺いました
これからの「らんたん寮」について伺いました

若者世代が中長期滞在ができるコミュニティスペースとして、新たにはじまった「らんたん寮」。

「らんたん寮を利用する人にとって、まずは安心して落ち着いて過ごせる場所にすること。そして、自分のやりたいことに挑戦したり、仲間と出会ったりできる拠点を目指したいです」と中島さんは話します。続けて、「ここでの暮らしを通して、自分の意思を持ちながら相手と対話して、お互いに歩み寄る経験を積んでいくことが、この先の社会で生きていくために欠かせない力になるんじゃないかと思っています」と想いを語ってくれました。

絵本作家・アニメーターいとうえりなさんによる「らんたん寮」をイメージしたイラスト
絵本作家・アニメーターのいとうえりなさんによる「らんたん寮」をイメージしたイラスト

私は以前から「らんたん亭」にボランティアメンバーとして関わっていますが、そうなったキッカケは過去にデンマークの「フォルケホイスコーレ」で過ごし、自分の感覚を取り戻せる時間を持てた経験が大きかったからです。

北欧独自の教育機関である「フォルケホイスコーレ」では、年齢や背景の異なる人々が集まり、対話を通して自分自身と向き合う時間を持つことができます。社会に求められるスキルの習得ではなく、興味の赴くままに学び、立ち止まって自分の考えや価値観を確かめることの大切さを実感した場所です。

のんびりリラックスしながら話せる窓際
のんびりリラックスしながら話せる窓際

帰国後、日本にも同じような場がないか探していたときに「らんたん亭」と出会いました。そして、その延長線上にある「らんたん寮」の考え方にも自然と惹かれていました。ここでの時間が多くの人にとって、自分と向き合うキッカケになるのではないかと想像しています。

「らんたん亭」や「らんたん寮」の運営は、“居場所”と“きっかけ”の場を守り育てるサポーター「らんたん亭守(もり)」の方々の寄付によって成り立っています。足元を照らし、あたたかさを届ける“らんたんの火”を灯し続けるためには、“薪”をくべ続けることが欠かせません。みなさんからの継続的な寄付が、その“薪”となり、この場を未来へとつなぐ大切な力となっています。

「らんたん亭」
https://rantantei21.wixsite.com/rantan

「しまいばなし」執筆者のしまいしほみ

文=しまいしほみ(トネリライナーノーツ 編集者)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/shimai/