日暮里舎人ライナー「江北駅」より徒歩圏内、足立区関原にオープン予定の駄菓子屋「irodori」。
その駄菓子屋は、どんな環境で生まれ育った子も気軽に来られる、“子どもの居場所”を作るべく、特定非営利活動法人「Chance For All(CFA)」の学生チーム5人が立ち上げます。その内の1人、「irodori」PR長である松尾郁実さんが、この駄菓子屋プロジェクトに関わる人の物語を描く連載が「イロドリストーリー」です。
第1話では、「CFA」学生チーム代表の飯村俊祐さんを取材しました。
※「irodori」の最寄り駅は「西新井駅」となります。
(取材日:2021年5月25日)
飯村俊祐さん(以下、飯村さん)は、7月に足立区関原にオープン予定の駄菓子屋「irodori」を運営する特定非営利活動法人「Chance For All(以下、CFA)」学生チームのリーダー。駄菓子屋「irodori」は、どんな家庭や環境で生まれ育った子も気軽に来ることができる“子どもの居場所”となることを目指している。なお、私も「CFA」学生チームの一員として、飯村さんと共に「irodori」プロジェクトに取り組んでいる。
CFAとの出会いと駄菓子屋プロジェクトの始まり
飯村さんの「CFA」との出会いは、「CFA」主催の夏イベントだった。そこで、「生まれ育った家庭環境によって、その後の人生が左右されない社会の実現」という彼らのミッションに共感、飯村さんは「CFA」にボランティアとして関わるようになった。
ボランティアを続けていたある時、「CFA」代表の中山先生にこう声をかけられた。「学童を卒業した子や、通っていない子がどうも気にかかる。そのような子たちにもアプローチする事業をやってみないか?」飯村さんは、根っからの子ども好きで、しかも、0からなにかを生み出す事に興味があった。「ぜひやらせてください!」と二つ返事で、中山先生の提案を引き受けた。
そこから、飯村さんは中山先生と話し合いを重ねて、最終的には「福祉的な要素を全面に出さず、包括的に子どもを支援することができる、“駄菓子屋”が良いのではないか」という結論に至った。これが駄菓子屋「irodori」プロジェクトの始まりだ。
活動の原点は、“正義感から来る怒り”
そういう飯村さん自身の幼少期は「かなり恵まれていた」と本人は言う。塾に通わせてもらい、中学受験もさせてもらった。しかも、勉強を押し付けられていたわけではなく、幼い時から好きだった野球も続けていた。恵まれた家庭環境で育ったにも関わらず、「どのような環境にいる子どもであっても、救いたい」という情熱をこんなにも持ち続けられるのはなぜか、それを問うてみた。
「正義感がすごく強いから」飯村さんは私の問いに対してまっすぐに答えた。そして、彼自身が昔を振り返る。
小学生の頃、クラスで何かをする時に楽しくなさそうな子を見ると、自分も楽しくなかった。それで、みんなが楽しめるようにという調整役を、いつも買って出ていた。自分自身は明るい性格で、コミュニケーションを取るのは得意だったが、それが苦手な子も気にかけていて、自然と話しかけていた。
また、心に宿る正義感を自覚するようになったのは、中学生の時。当時所属していた野球チームの監督に、こんな事を言われたのがキッカケだ。「1年生じゃなくて、3年生が雑用をやろう。ただ学年が上というだけで驕るのではなく、弱い立場の人に気付いて助けようとする姿勢を大切にしなさい。みんなが人のために、相手を思って行動するのが大事だ」それを聞いた飯村さんは、小学生の時から自分のやってきた事が正しかったと確信した。
昔から正義感の強い飯村さんだから、子どもたちが蔑ろにされたりお金が循環しなかったりする今の社会を変えるために、日々動くのだろう。取材の最中、「大人の都合で子どもたちの可能性を潰してしまうのは、おかしなこと!」と憤りを露わにした。
そんな“正義感からくる怒り”。それこそが、飯村さんが「どのような環境にいる子どもであっても、救いたい」という想いを持ち続けられる理由なのだ。飯村さんの溢れ出る情熱、その根源を垣間見る事ができた。
“人として正しくある”という道徳心を育む
話を現在に戻そう。駄菓子屋「irodori」のプロジェクトで、中山先生から元々託されていたのは、端的に言えば「子どもに関する社会課題を解決する」というミッションだ。
しかし、飯村さん自身は、「CFA」でのボランティアを通して逆に、子どもたちに学ばされる機会が多かったそう。そこで、“人として正しくある”という道徳心も意識するようになったのだとか。自らの言動がそのまま子どもたちの眼に映るから、ある意味で鏡のようなものだから、「素直に、謙虚に、真面目に、誠実に」という風に、常に自分を省みなくてはいけない。
「irodoriのボランティアに応募してくれた人も、ただ子どもたちと遊ぶだけではなく、“人として正しくある”という意識を少しでも持ってくれたらいいな」と、飯村さんは言う。そうなれば、「irodori」が、子どもに関する社会課題をただ解決するだけでなく、子どもにとってもボランティアにとっても、道徳心を育む場所になるからだ。
道徳心さえ養われれば、学力がなくても、他人の気持ちを考えて行動することができるようになる。飯村さんは、そう考えている。
自分自身も成長するために、もがく。
“人として正しくある”という道徳心について熱く語った飯村さん。しかし、苦渋の笑みを浮かべながら、実際には自分もまだまだだと言う。CFAの先生や外部の社会人と関わって気付いたり、irodoriのメンバーと共に活動していて価値観の違いに直面したり。自分の中では誠実だと思っても、他から見ると誠実でない事もあると学んだそうだ。
それに加えて、irodoriの活動では、代表である自分の行動が、良くも悪くもダイレクトに結果として現れるのを体感していると言う。一つ一つの行動で手を抜いてしてしまうと、来てくれる子どもや支援してくれる人が少なくなる。熱意がいくらあっても、そこにしっかり誠実さがないと応援者は増えない。「より自分を正さないといけない。信頼って、すぐに落ちてしまうから」と真剣な眼差しで語った。
私が思うに、飯村さんのすごいところは「不完全を認め、常に自らを更新しようとする姿勢」にある。一般的に、優秀なリーダーは、要領が良くてミスをしない人間だと思われがちだ。しかし、泥臭くもがいている飯村さんを見ていると、こちらがリーダーとして本来あるべき姿なのではないかと思う。
大学生だからこそ、irodoriでできること。
取材の最後、飯村さんに駄菓子屋「irodori」を大学生が運営する意義について聞いてみた。
「大学生が運営するから、他の大人がやるよりも、子どもたちとの距離が近いのが強み」だと、飯村さんは言う。つまり、子どもたちにとって近すぎず遠くもない、見やすい未来であるからこそ、運営者の大学生たちが明確なロールモデルとなることができるのだ。また、子どもたちが不真面目な部分もさらけ出せるという点もポイント。学校の先生や大人には言えないような話も、大学生になら気軽に言えるし、共感してもらえるだろう。
遊んでもらえて、不真面目な話もできて、甘えてもOK。このような距離感こそが、大学生の価値だ。そして、子どもたちにとって心地の良い「子どもの居場所」を作る突破口となるのではないだろうか。駄菓子屋「irodori」の物語は続く。
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取材=松尾郁実(トネリライナーノーツ サポーターズ)
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撮影=山本陸(トネリライナーノーツ サポーターズ)
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