「“おうちフォト”を叶える!ママが活躍する会社の挑戦」染谷江里さん×清水いずみさん 【ダチバナシ 3席目】

ダチバナシ

トネリライナーノーツの紹介企画である「ダチアダチ」や「舎人線寫眞」に登場した人が、それぞれに話し手と聞き手を務める対談が「ダチバナシ」です。

「T&E JAPAN」代表の染谷江里さん(左)と、「トネリライナーノーツ」広報・PRの清水いずみさん(右)
「T&E JAPAN」代表の染谷江里さん(左)と、「トネリライナーノーツ」広報・PRの清水いずみ(右)

3席目となる今回の話し手には、足立区西新井のハンドメイドブランドの会社「T&E JAPAN」代表の染谷江里さんをお招きしました。また、聞き手は、「トネリライナーノーツ」広報・PRの清水いずみが務めます。
(取材日:2026年1月20日)

「T&E JAPAN」の事業と新しい挑戦

取材は足立区西新井にあるレンタルスペース・制作アトリエ「LOTUS TABLE LABO」にて
取材は足立区西新井にある制作アトリエ「LOTUS TABLE LABO」にて

――はじめに、江里さんの事業について教えてください。

染谷さん 私は、2014年に創業したハンドメイドブランドの会社「T&E JAPAN 株式会社」の代表取締役をしています。「ものづくりで女性の活躍の場を増やす」という理念のもと、足立区でベビーのグッズの企画・製造・販売を行っていて、主に子育て経験のあるママさんたちが中心となって、事業に携わってくれています。

私たちが活動をする中で、ママさん自身でも作品を制作されている方が多いと知りました。そこで、「自身で制作した商品を、ビジネスとして販売するにはどういうことが必要なのか」が学べる場として、私なりの経験と中小企業診断士の先生の知見をもとに「ハンドメイドビジネス学校」を2019年に始めました。現在、卒業生は100名を超えています。

足立区西新井にあるレンタルスペース・制作アトリエ「LOTUS TABLE LABO」
足立区西新井にある制作アトリエ「LOTUS TABLE LABO」

染谷さん また、継続してハンドメイドの作品を販売したい方には、足立区西新井にあるレンタルスペース・制作アトリエ「LOTUS TABLE LABO」を拠点に、商品を販売する機会を提供しています。特に、コロナ禍の時期に実施してきました。

そして、現在は「足立区観光交流協会」の協力のもと、元渕江公園で開催される「クリスマスマーケット光の祭典」という企画を主催しています。そこでは、10名から15名の方を選抜して出店してもらっています。現在はこのような取り組みを通して、ママたちの活躍のプラットフォームづくりを行っていますね。

「スタジオアリス」とコラボした、おうちで写真を撮れるキット「OUCHI Anniversary Box」
「スタジオアリス」とコラボした、おうちで写真を撮れるキット「OUCHI Anniversary Box」

――今回、「T&E JAPAN」で新しい商品を展開すると聞きましたが、どんなものでしょうか?

染谷さん 「スタジオアリス」さんとコラボした、自宅で気軽に1歳~3歳のお子さんのお誕生日の記念撮影を楽しめるキット「OUCHI Anniversary Box」を開発しました。

「スタジオアリス」とコラボ開発した「OUCHI Anniversary Box」

「OUCHI Anniversary Box」の説明をする染谷さん
「OUCHI Anniversary Box」の説明をする染谷さん

――「OUCHI Anniversary Box」の中身はどんなものが入ってるんですか?

染谷さん 誕生日や記念日に合うデコレーションや、撮影小物がはいっています。ひとつは、タペストリーです。「Happy Birthday」の文字が入ってるんですが、「T&E JAPAN」で一緒に活動してきたママさんでカリグラフィの講師をしている方が作ってくれました。「T&E JAPAN」オリジナルデザインで、言葉もみんなで一緒に考えました。

もうひとつは、木製ケーキトッパーです。one,two,threeと3種類入ってるので、年齢に合わせて使っていただけます。これは、江東区木場で起業された女性社長さんが制作してくれました。

そして、王冠ですね。「T&E JAPAN」はヘアアクセサリーが得意なので、その延長でパーティーグッズとして王冠をつくりました。あとは、ナチュラルカラーの風船、数字の風船と、家で撮影するときのテクニックブックがキットになっています。

――かわいいですね。

「トネリライナーノーツ」広報・PRの清水いずみ
「トネリライナーノーツ」広報・PRの清水いずみ

――タペストリーや王冠などは「T&E JAPAN」さんの商品としても馴染みのあるように感じるんですが、これまでの商品と違ったポイントはありますか?

染谷さん 大きな違いは、商品づくりのプロセスです。これまでは、ベビーアクセサリーを中心に自社で制作した商品を大手量販店やオンライン販売をしてきました。

今回は新たなチャレンジとして、「LOTUS TABLE LABO」や別の活動を通して出会ったハンドメイド作家の中から、ベビー向けのプロジェクトに参加したい方や、私たちの理念に共感してくださる方と一緒に企画・開発したところがポイントになります。

“逆転の発想”から生まれた新しいプロジェクト

「OUCHI Anniversary Box」誕生のきっかけを話す染谷さん
「OUCHI Anniversary Box」誕生のキッカケを話す染谷さん

――このプロジェクトはどんなキッカケで生まれたんですか?

染谷さん 私が通っているビジネススクールの「ビジネスモデルイノベーション」という授業で、「自分の会社、または、別の会社で、新規事業をビジネスモデルから考えよう」という課題が出てたんです。その時に、たまたま「スタジオアリス」さんの方から、「何か新しい事業をやりたいと思ってるから考えてもらえる?」と声をかけてもらえたので、いい機会だと思って考えてみたんですよね。

それで、その授業のポイントが“逆転の発想”という考え方でだったので、「今までは記念撮影を写真スタジオで撮っていたけど、もしかしたら家で撮る方法があるかもしれない」と思ったんです。

「OUCHI Anniversary Box」
「OUCHI Anniversary Box」

染谷さん すると、ちょうど『たまひよ』という雑誌に、記念日に家で撮影する人のデータが掲載されていたんですよ。1歳くらいのお子さんがいる家庭では、何パーセントくらいの方が家で記念日の撮影をすると思いますか?

――50%くらいですかね?

染谷さん 実は、75%の方が家で撮ってるそうなんです。この数字を見て、「これは可能性があるな」と思ったんですよね。

「スタジオアリス」の撮影技術と「T&E JAPAN」のノウハウがあわせた「OUCHI Anniversary Box」
「スタジオアリス」の撮影技術と「T&E JAPAN」のノウハウがあわせた「OUCHI Anniversary Box」

染谷さん そこから、「家で撮影する人は何を重視するか」を考えて、グッズを飾ること、子どもと一緒に過ごす時間を楽しむことを定義しました。こうした考えに、周りのママたちも共感してくれたんですよね。

「スタジオに行くまでじゃないんだけど、家で撮れる何かがあったらいいな」とか「300均や100均で揃えると統一感が出ないよな」とかといったニーズを拾って、私たちが培ってきたベビーグッズのノウハウと、「スタジオアリスさん」の写真が映える撮り方や飾り方の監修を掛け合わせて、このセットをつくりました。

――私自身も子どものお祝いを家で撮った経験があるので、すごくわかります。

ママが活躍できる場をつくる“プラットフォーム構想”

関わるママさんたちについて話す染谷さん
関わるママさんたちについて話す染谷さん

――「OUCHI Anniversary Box」は、カリグラフィー作家さんをはじめこれまでの活動を通してつながってきた作り手の方々が関わっているとのことですが、そのあたりについてもう少し詳しく教えていただけますか?

染谷さん 「T&E JAPAN」を立ち上げたときから最終的に達成したいことは、「ママさん1人1人が自分の身の丈にあった形で活躍できる場をつくること」なんですよね。プラットフォームのような存在になりたいと思っていたんです。

個人で活動する場合、どうしても作れる数に限界があったり、品質保証や責任の問題があったりと難しさがあるんですよね。実際、自分で作ったアクセサリーを法人に提案しても取り扱ってくれるところが少なく、信用を得るのが難しいなと感じたんです。ただ、会社として名刺を持っていくと、反響が全然違うんですよね。

ヘアアクセサリー制作の様子
ヘアアクセサリー制作の様子

染谷さん そこで、会社という形を活かせば利用すれば何かできるんじゃないかと思い、内職をしている方たちに話してみたところ「私も参加したい」という声があったから、「じゃあ、みんなでやってみようよ」と始めました。

裁縫が得意な人、接着・のり付けが得意な人、書くのが得意な人など、それぞれの得意な力を結集して1つの商品をみんなで完成させて、会社として販売をする仕組みをつくりました。こうした想いに共感して「同じような場を広げていきたい」と思う人たちが 「OUCHI Anniversary Box」 の制作に関わってくれています。

――女性たちの活躍の場のキッカケになってる商品なんですね。

染谷さん そうですね。コロナ禍を経て、会社のこれからを考える中で、「自分がすべてを抱えて会社を運営する」のではなく、「会社を土台にして、関わる人たちが羽ばたいていけるプラットフォームとして機能したほうがいい」と考え方が変わったんです。そう思うようになってから、商品づくりに対する向き合い方も大きく変わりましたし、もし当時のままの考え方だったら、今回の「OUCHI Anniversary Box」も生まれていなかったかもしれません。

それぞれの得意を活かした仕組みづくりについて話してくださりました
それぞれの得意を活かした仕組みづくりについて話してくださりました

――なるほど。この商品は、どんな人に届いてほしいですか?

染谷さん まずは、「こういう商品が欲しかった」と思ってくれる方に届けたいですね。あとは、単に商品を販売するというより、この商品に関わる人たちの想いや技術が重なり合い、新しい付加価値として広がっていくキッカケになればいいなと思っています。

今回の取り組みは、この商品だけにとどまらず「スタジオアリス」さんが持っている衣装や、子どもを笑顔にする技術など、これまでスタジオで提供されてきた価値を、別の形でも届けられる可能性があると感じています。

ライフステージに合わせて、女性たちが自分らしく働ける社会へ

作業をする染谷さん
作業をする染谷さん

――「T&E JAPAN」さんのステージが変わっていきそうですね。ステージが変わるキッカケは、染谷さんがビジネススクールに通われるようになって変わったんですか?それとも、それより前に何かキッカケがあったんですか?

染谷さん どうだろうな。ビジネススクールに通ってから自分の弱さや、見ている視点の小ささに気づいた部分はありますね。ただ、元々考えていた「世界中にママの手作りを」という理念は変わらないかな。

――その具体的な“弱さ”をお聞きしてもいいですか?

染谷さん 弱さはいっぱいありますよ。失敗ばっかりです(笑)事業を大きくしたりステージを変えたりする時、ふとした瞬間に、関わってくれている“人”の存在を忘れてしまってたなと気付くことがありました。今は、「その人たちが喜ぶためにはどうしたらいいか」という視点から考えるようになりましたね。結局最後は、“人”ですよね。

「T&E JAPAN」が得意とするベビーヘアアクセサリー
「T&E JAPAN」が得意とするベビーヘアアクセサリー

――世間からは、染谷さんは経営者としてとても華やかに見られることが多いと思います。私も、主婦として女性として「すごいな」という眼差しでみている1人です。でも、実際には経営者としての役割や、母親としてなど、いろいろな立場の中で葛藤されていた時期もあったのではないかと思うんですが、どうでしょう?

染谷さん 個人としての葛藤もありますし、「女性として」という部分から生まれる葛藤も大きかったと思います。事業を始めて数年経った頃、女性経営者が取り上げられるようになっていたので、女性向けの創業支援融資を利用できたことがありました。女性は年齢に関係なくチャレンジできる制度で、「女性であることで、下駄を履かせてもらえた」と感じる場面も確かにありました。

“人”が一番大切と話す染谷さん

染谷さん 一方で、女性経営者だからこそ求められやすい役割もあって。共感力や親しみやすさを期待される反面、最終的な意思決定や論理的な判断の場に立とうとすると、周囲から反対されたり、邪魔されたりすることもありました。実際に、うまくいかなかった事業もあります。

さらに、仕事と家庭の関係についても、女性は個人に責任が向きやすいと感じています。例えば、「子育てをしていないから、こうなったんじゃないか」など、子どもに何かあると自分の事業のせいにされてしまうこともあります。

社会の構造やこれまでの慣習もあると思いますが、個人にフォーカスされやすい分、マイナスのダメージも大きい。そこは強く感じてきましたね。

女性としての葛藤に共感しながら、染谷さんの姿勢を深堀る清水
女性としての葛藤に共感しながら、染谷さんの姿勢を深堀る清水

――お話にあった通り、社会全体が女性の活躍を後押ししてくれて、男女問わず起業に挑戦しやすい時代になってきていると思います。一方で、そうした流れに、違和感やプレッシャーを感じる女性もいると個人的に感じています。全員が起業家である必要はないと思うのですが、そのあたりについてはどうお考えですか?

染谷さん 起業って、どうしても規模の大きな事業を指す言葉として使われがちですよね。でも、辞書を引くと本来は「生業を起こす」という意味で、規模によらず、自分で立てた目標や計画に向かって進んでいくプロセスという意味なんですよ。だから、自分の身の丈で何かをやること自体を、社会全体で応援できる風潮がつくれたらいいなと考えていて。

そこが大事だと思ってるし、私の背中で見せていければ、「自分の身の丈で起業したい」と思ってる人たちの勇気になるんじゃないかと思っています。

――なるほど。こうやって前を進んでくれる女性の存在があるとすごく励まされますし、「そういう生き方もあっていいんだな」と思えますよね。江里さん、ありがとうございました。

T&E JAPAN
ホームページ
https://tandegroup.jp/

OUCHI PHOTO by Studio Alice
ホームページ
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「T&E JAPAN」代表の染谷江里さん
「T&E JAPAN」代表の染谷江里さん

話し手=染谷江里さん

聞き手=清水いずみ(トネリライナーノーツ 広報・PR)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/izumi/

編集補佐=しまいしほみ(トネリライナーノーツ 編集者)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/shimai/

撮影=山本陸(トネリライナーノーツ カメラマン)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/riku/