「トネリライナーノーツ」アシスタントのしまいしほみが、実際に体験したことで得た発見や感じた思いを書き綴るのが「シマイクエスト」です。
「シマイクエスト」の第1話は、足立区綾瀬にあるコミュニティスペース「あやせのえんがわ」代表の森川公介さんが講師を務める「ローカルプレイヤーの教室」第1期の体験談をお届けします。
(体験期間:2023年4月~6月)
「ローカルプレイヤーの教室」とは
「ローカルプレイヤーの教室」は、“地域の中で「したい」を「できる」に”という趣旨で、地域で起業・複業をしたい方、地域活動を始めてみたい方、好きなことで何か活動をしてみたい方、地域活動を始めてみたがうまくいかないといった方などを対象にした講義です。“大人の学びノート”を使いながら、自身と向き合うワークと、実践を踏まえた計5日間のプログラムが組まれています。
1日目は、“自分を知る”を軸に、考えるためのテクニックやコツ、視点を学び、自分のやりたい事と照らし合わせながら掘り下げていきます。
2日目は、“相手を知る”を軸に、地域で活動をするにあたり、“人”との向き合い方や繋がり方を取り入れつつ「したい」を「できる」に 変えるポイントを学びます。
3日目は、実践のための計画を作成し、4日目は計画をもとに実践をします。そして5日目は振り返りや、これからのアクションプランについて考えるというプログラムです。
今回の一連の講義では、「ローカル」とは自分が決めたエリアや活動範囲を指します。そのため、「ローカルプレイヤー」とは 、“「自分」と「ローカル」に向き合い、実践する人”と定義されています。ローカルの良さを活かす人、新しい価値や繋がりを生み出す人など、自分がそのローカルで何かできるのか、どんなことをすると幸せになれるのか、を考えて実践していきます。
講師は「あやせのえんがわ」代表の森川公介さん。森川さんは足立区綾瀬在住で、前職の介護関係の仕事をしている際に、地域の課題に触れる機会が多く、高齢者の介護の前に地域の課題を解決していかなければ高齢者の未来はないのではないかと考え、2021年に「あやせのえんがわ」を立ち上げました。
「あやせのえんがわ」は、“地域のえんがわになりたい”という想いから、顔が見えてゆっくり座って世間話ができるような、昔ながらの居場所を目指した足立区綾瀬のコミュニティスペースです。地域の品や生産者の顔が見える商品を扱う「こぢんまり商店」や、色々なイベントを定期的に開催しています。
答えは“自分の中にしかない”
私は「みんなが笑って暮らせる町や社会にしたい」というザックリとした野望を持っています。ただ、そのためには何ができるのか、どうしたいのか、やりたい事が薄っすら見えている気がしながらも、私の心の中には何か毛糸の絡まりのような、わだかまりを薄々と感じている日々を過ごしてきました。
そんな心境の中、「ローカルプレイヤーの教室」が開催されることを知り、参加することにしました。申し込んだ段階では、「参加することで答えが見つかるかもしれない」とか「私の中に潜んでる答えを導いてもらえるかもしれない」とかと思い、講師の森川さんや他の参加者との対話によって「答え」は滲み出てくるだろうと、とても都合よく考えていました。
しかし、「ローカルプレイヤーの教室」の初日、森川さんからの言葉で、我に返ったように気付かされました。
「地域での活動ややりたい事の答えって、どうひっくり返っても自分の中にしかないんですよね。どれだけ高い料金のセミナーを受けても、優秀なメンタリングを受けても、どうしても最後は自分で答えを出すしかないんです。結局、自分が出した答えが、モチベーションも1番上がると思います」
そうだった。結局考えるのは自分で、答えを出すのも自分だった。
それを分かってはいたはずだったのに、「どうしたらいいでしょうか?」という私の問いに、「こうしたらいいんじゃない?」と川の流れのように出てくるアイディアや、何か雷が落ちるような衝撃を期待している自分がいました。
掘り下げと問いを繰り返す
初日は、“自分を知る”を軸に、自分の「したい」を考えるためのポイントや、考えを突き詰めることによって得られた結果の事例を学び、それを自分にあてはめながら自分を掘り下げていくワークタイムが30分ほどありました。
書くも良し、歩いて考えるも良し、リラックスするも良しという事でしたが、私は頭の中にある理想を黙々とノートに書き連ねました。書く手が止まりませんでした。
ワークタイムの後は、書いた内容をシェアし、森川さんがさらに問いや考えるべき点を投げかけてくれました。たくさん考えていたはずなのに、易々と根本的な問いを投げかける森川さん。さすがだなぁと思いながら、宿題ではないですが、「できる」に近づくための課題を与えられた気がします。
2日目は、“相手を知る”を軸に、同じように自分の「したい」を掘り下げていきます。相手のニーズ、自分のニーズ、その2つの合致点について考えるなど、この日もとても頭を使いました。
もちろん、すぐに答えが出るわけでも、考えが完結するものでもありません。両日ともに、私は帰りの電車の中で森川さんに投げかけられた問いについて悶々と考えていると、これからの楽しみと不安と疑問とで頭がいっぱいになりました。2日目などは考え過ぎて、いつの間にか降りるはずの駅を6駅も過ぎていて驚きました(笑)
立ち止まる勇気と再出発
そんなある日、喫茶店で「ローカルプレイヤーの教室」で与えられた問いや、時間内に考えれなかった事を1人で考えていると、ワークタイムですらすらと「したいこと」について書けていた自分を、疑う自分が出てきました。
例えば、モノを「売りたい」のか、モノを「広めたい」のか、モノを「描きたい」のか、というような、動詞の部分が特に曖昧でした。
さらに、そもそも「したいこと」自体がもしかすると少し違うのかもしれないと、沼にはまるようにどんどん分からなくなり、これまでたくさん考えてきただけに切なさまで感じてしまいました。
そのことを森川さんに伝えると、「モヤモヤがあっていいんですよ。問いが深まっていることはいいことだから」と言っていただき、腑に落ちていない何かがありながらも、活動してみてどこに違和感があるのかはまた考えればいいか、と前向きな気持ちになることができました。
立ち止まるとどうしても時間だけが過ぎていき、何してるんだろうと不安になりますが、この気持ちを無下にしたまま前に進むと、モチベーションが続かずに飽きるだろうなとも感じるので、すでに事業を始めている参加者が多い中、私は少し立ち止まってスタート地点の違和感と向き合いたいという結論に至りました。今は少し視野が狭まってしまってるように感じるので、アンテナは張りつつ、流れに身を任せてみようと思います。
やりたいこと、ワクワクすること、面白いと思うことは、自分の成長と共に常にアップデートされていき、過去に考えていた事が今となっては1番ではなくなっている。気分屋なだけかもしれませんが、そんなことが私にはよくあります。そのうえ、「これが私だ!」と肩書がつくような何者かになる事に憧れていたのかもしれません。
そんな私のやりたい事は、時には綺麗な石に見えたり、よく見ると曇った石に見えたりの繰り返しです。それでも、毎回自分と向き合い「なぜ」を繰り返し、やりたい事の核を探っていく。そして、地域の課題や相手のニーズ、時代の流れを観察しながらやりたい事と合致させ、時には軌道修正をしながら「したい」を「できる」に変えていく。
きっと生きているとそんなことの繰り返しなんだろうなと思いますが、自分の中の指針と、大切にしたい軸を守ってさえいればきっと間違った方向にはいかないだろうと信じて、私はこれからも探し続け挑戦し、楽しめる道を1歩ずつ進んでいきたいと思います。
仲間とのゆるいつながり
「ローカルプレイヤーの教室」最終日には、参加者が集まり、第1期の振り返りや総まとめを行いました。というよりも、それぞれの今の課題だったりこれからの方向性や戦略だったりを、自由に対話する時間になっていました。第3者の視点を聞くことで、扉は大きく開き、あと押しをしてもらえたので、活動は違っても、まるで1つのチームのようです。ローカルプレイヤーたちのつながりは、俯瞰すると足立区を支える「チームあだち」と名付けたくなります。
悩んでいる時や課題を抱えている時は、辛くモヤモヤすることがありますが、絡まった糸をほぐす時のように丁寧に1つずつ悩みを分解して、問いを具体的に考える。そして、誰かのために役に立ちたいと同じ志を持つ仲間と対話する事で、解決の糸口が見える場合がある。そんなことを、「ローカルプレイヤーの教室」で学ぶことができました。
互いに高めあい、情報交換ができる仲間とつながることができるのはきっと、森川さんの人柄と「あやせのえんがわ」が“ゆるいつながり”を大切にしてきたから実現できるんだろうなと感じました。
▼ローカルプレイヤーの教室
https://engawa-ayase.com/local-player/
▼あやせのえんがわ
ホームページ
https://engawa-ayase.com/
文=しまいしほみ(トネリライナーノーツ アシスタント)
トネリライナーノーツ記事
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