日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩6分の全學寺にご縁がある人の物語を、職業ライターが紹介する「全學寺じゅずつなぎ」第4回。
今回お話を聞いたのは、東京都立川市に本社を置く「メモリアルアートの大野屋(以下、大野屋)」の齋藤勝英さん。同社は葬儀からお墓の建立まで、葬祭関連の事業を行い、全學寺の墓地を担当している会社の一つ。全學寺の副住職は、大野屋の中でも特に齋藤さんに対して信頼を寄せているという。齋藤さんが日々何を考え、仕事にどう向き合っているのかを聞いてみた。
(取材日 令和3年9月19日)
業界歴23年以上。自分がなぜ生きるのかを知りたかった
元々は、山から掘り出した石を彫刻し墓として建立する石材屋として、1939年に創業された大野屋さん。仏壇の販売や葬儀の手配、保険など事業を拡大していき、今は関東一円と大阪、名古屋を拠点に展開している。
全學寺との付き合いは、今の住職が全學寺にやってきた1960年代頃から。大野屋さんの協力により檀家墓地が生まれ、宗派を問わず入れる霊園「舎人浄苑」も、大野屋さんの手によるものだ。墓の建立のほか、補修や彫刻の追加も行う。齋藤さんは、2019年頃に全學寺の担当となった。
齋藤さんが業界に入ったのは23年ほど前のこと。就職活動でいろんな業界・企業を見て回る中で、一生に一度のものとなるお墓という存在に興味を持ったのが就職を決めた理由の一つ。また「人はなぜ生きるのか?そしてなぜ死んでいくのか」を自分なりに考えたかったそう。「その人の生き様というのは、亡くなる間際や直後の周囲の人たちに現れると思うんです」と齋藤さん。今でも仕事を通して、自分が何のために生きるのかを先人から学びたいと思っている。
齋藤さんが感じるお墓需要の変化
仏事に関わる仕事に長年従事する中で、齋藤さんは人々がお墓に求めるものに変化を感じているという。
これまで、2000件以上の墓の建立を担当してきたという齋藤さんは、遺された人たちのその後もたくさん見てきた。中には、せっかく立派なお墓を買っても、お参りにほとんど来られない人や、きょうだい間で争った末に相続したのに、お参りに来ない人も。一方で、決して豪奢とは言えないお墓に毎日足を運ぶ人もいる。
お参りに来る人がおらず半ば放置されるお墓に対して、齋藤さんは残念な気持ちを持つ一方で、従来の「お墓を継ぐ」という前提が崩れてきているのを感じるのだという。
「今は、お子さんがいらっしゃらない家庭が増えましたし、女性のお子さんしかいなくていずれ嫁いでいってしまうかもしれないというご家庭もあります。やむを得ない事情で、頻繁に墓参りができないのかもしれません。代々引き継ぐスタイルのお墓だとやっていけない人もいるのは、時代の流れとして仕方ない気がしています」。
大切にしたいのは先人を送り出す。「遺された人」の気持ち
そうした中で、現在は従来のようなお墓もあれば、齋藤さんが業界に足を踏み入れた23年ほど前にはほとんど見られなかった「樹木葬」や「マンション型室内墓」などもある。また、故人と離れたくないという思いだったりから「手元供養」を選ぶ人もいる。
今は先祖や故人の供養の仕方を選ぶ時代だと言えるし、齋藤さん自身、従来のようなお墓を引き継いでいくかたちに固執する必要はないと考えている。2021年から全學寺でスタートした「全學寺墓苑 安心プラン」も、そういった現代的な考えから、大野屋さんの協力によって生まれた新たなお墓のスタイルだ。「全學寺墓苑安心プラン」は、20年間は個別のお墓で安置され、期間終了後は永代供養墓に移設されるというもので、主に、後継者がいない人や、子どもたちに引き継ぐための負担をかけたくないと考える人に向けたお墓だ。齋藤さんは語る。「大事なのは先祖・故人をいかに無理なく大切に供養していくか。そうしないと、お墓の存在意義そのものがなくなってしまいます。お客様に合った供養のスタイルに巡り会えるよう、たくさんの選択肢があればいいですよね」。
お墓を建ててからが関係の始まり
副住職いわく、全學寺からの相談に対して、常に誠実に向き合ってくれるという齋藤さん。日々の仕事ぶりからは、お墓がただ売れればいいではなく、どうすればお客さんに供養の心を大切にしてもらえるかという想いを感じるという。それは全學寺の考え方と一致している。
「やはり石材屋ですから、墓石でのお墓を建てていただけるとうれしいですが」と、齋藤さんは笑う。しかしそれ以上に、お墓を建ててそれで終わりにはしたくないと考える。「私共とお客様は、お墓を建ててからが関係の始まりだと思います。誰のためのお墓なのか?を常に考えていきたいですね」。
全學寺
住所
東京都足立区古千谷本町2-22-20
ホームページ(ゼンガクジ フリー コーヒースタンド)
https://www.zengakuji12.com/
メモリアルアートの大野屋
ホームページ
https://www.ohnoya-cemetery.com/
今回の応援者 大島俊映(全學寺 副住職)
全學寺じゅずつなぎの第4回では、「メモリアルアートの大野屋」北関東支店で副支店長を務める齋藤勝英さんを取り上げてもらいました。私たちのお寺では、“供養の心”を大切にしていますが、齋藤さんの仕事ぶりは、それを体現されています。一般の方は中々知る事が少ない、寺院運営の裏側を、齋藤さんの想いと共に知っていただけたら嬉しいです。
文=井上良太(トネリライナーノーツ 副編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/inoue/
撮影=山本陸(トネリライナーノーツ サポーターズ)
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