「すんでるまちを、せまくする。―葛飾会議にみる地域コミュニティのつくり方―」 森谷哲さん【ガチアダチ サミット episode.1】

ガチアダチ サミット

「トネリライナーノーツ」が毎月第3日曜に足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」で主催しているイベント「オオシマナイト」で実施する公開取材が、「ガチアダチ サミット」です。

「葛飾会議」創設メンバーの森谷哲さん
「葛飾会議」創設メンバーの森谷哲さん

「ガチアダチ サミット」のepisode.1となる今回は、葛飾区の地域活性化イベント「葛飾会議」創設メンバーの森谷哲さんに登壇していただいて、「すんでるまちを、せまくする。―葛飾会議にみる地域コミュニティのつくり方―」をテーマにお話を伺いました。聞き手は、トネリライナーノーツ編集長の大島俊映が務めます。
(取材日:2024年6月16日)

地域の人たち同士が繋がるコミュニティ「葛飾会議」

「オオシマナイト」主催者の大島と(左)、「ガチアダチサミット」公開取材ゲストスピーカーの森谷哲さん(右)
「ガチアダチ サミット」ゲストスピーカーの森谷さん(右)と「オオシマナイト」主催者の大島(左)

――森谷さんの方から簡単に自己紹介をお願いします。

森谷さん 東京都葛飾区亀有から参りました森谷と申します。足立区はアウェイでドキドキします(笑)IT関係の仕事をしながら、子ども向けにプログラミングやテクノロジー教育をやったり、子ども食堂の支援をするNPO法人で活動させてもらったりしています。

今日は、僕が葛飾区で2016年からやっている「葛飾会議」という交流会の話をメインにさせていただこうかなと思っております。よろしくお願いします。

――「葛飾会議」は、“すんでるまちを、せまくする”をテーマに掲げてると思うんですけど、どういう想いからスタートして、また、そのスローガンを掲げたんですか?

森谷さん 「葛飾会議」の成り立ちは、自分の地域で何かをやりたいなって考えた時に、「葛飾区全体でやりたい」、「いろんなおもしろい大人たち同士を繋ぎたい」、「僕もいろんな人と仲良くなりたいし、運営側としても楽しめるように」っていう趣旨でまずは名前を付けました。

「葛飾会議」創設メンバーの森谷さん

森谷さん 人と人が繋がるっていうことは、基本的には町と町が繋がっていくことだと思うんです。例えば、僕は亀有に住んでるんですけど、立石に行った時に「あそこにお店があるな」とか、「あの人はあそこに住んでいるはずだ」とか。「葛飾会議」をやることによって、地域をだんだんと狭くすることに繋がるんじゃないかな、っていうことで「すんでるまちを、せまくする」とした感じですね。

――「葛飾会議」の第1回目の運営メンバーは何人ぐらいだったんですか?

森谷さん 最初に何をやろうか全く決まってなかったんですけど、何をしようか探っている時に、鎌倉で活動している“カマコンバレー”っていう会議をしていて、それに見学へ行ったのが5人でした。そのうちの3人で始めた感じですね。

「葛飾会議」について深堀をしました

森谷さん 僕以外の2人が当時に何をやっていたかと言うと、1人はローカルラジオの「かつしかFM」でパーソナリティをやっていました。また、もう1人は地域プロモーションの会社「じも研」で、葛飾区を中心に地元生活を発信する「じーもかつしか」っていうwebメディアをやっていました。

その2人がメディア同士で何かもっとコラボできないか、っていう構想からなにかできないかを話し合っていたんですけど、お互いに会社に所属している同士ということもあり中々うまくいかなかったんので、「じゃあ、それを民間で何かできないかな」っていう流れで、僕も呼ばれたという流れです。

――「葛飾会議」第1回目を実際にやってみて、その時の手応えなどは覚えてますか?

森谷さん 2016年から、「毎月やろう」っていう構想の中で、2015年11月に試しで第0回をやってみようってなったんです。すごく覚えてるのが、登壇者・参加者を含めて、誰を呼ぶかというところですね。もう既に地域で活躍してる人はたくさんいたんですけど、すでに地域で活躍されている方はあえて呼ばないことにしました。僕も含めて、ちょっと地域活動がしたいなという人たちや、新しくできたばかりの団体をなるべく呼ぶ。だから、当初は人が集まるか心配だったんですけど、口コミで30人ぐらい集まってくれました。

 公開取材を「オオシマナイト」に参加してくださったみなさん
公開取材「ガチアダチ サミット」に参加してくださったみなさん

森谷さん すでに地域で活躍されている方を呼ばなかったことは、結果的に良かったと思っていますね。第0回目のあとに、「なんでおれを呼ばねえんだよ」と言われることもありましたけど、「今はあえて小規模でやっているんで」みたいな言い訳をしつつ始めたことで、「あそこに行くと、あの人たちが固まってるんでしょ」というような既成概念ができず、誰でも入りやすい場になって、ママさんとかも来てくれたので、そういうところはよかったです。

――「葛飾会議」では、登壇者にご自身の活動を紹介してもらうという形ですよね、それは最初からずっと変わらずですか?

森谷さん そうですね、最初から2パターンを続けています。

1つは、地域にいる人たちのお困り事の解決です。困ってることがあったら登壇してもらって、みんなからアイディアをもらうパターンです。登壇者に喋ってもらった後に、チーム分けをしてブレイストーミングをしてもらい、アイディアをもらいます。

「村越不動産」代表で、「まちなか整備・管理機構」代表理事の葛生さん
足立区にある不動産会社「村越不動産」代表で、空き家問題を解決する「まちなか整備・管理機構」代表理事の葛生さん

森谷さん もう1つは、葛飾区外の人に来てもらって、葛飾区の人に勉強をしてもらうパターン。今日来てくださった足立区にある不動産会社「村越不動産」代表で、空き家問題の専門家でもある葛生さんとは、2年前に繋がって「葛飾会議」にも登壇してもらいましたよ。

「葛飾会議」を8年で100回以上、継続による価値と継続のための変化

「ガチアダチ サミット」の司会をやってくれたふたり
「ガチアダチ サミット」の司会をやってくれたふたり

――つい先日「葛飾会議」が100回目を迎えた時に、僕も初めてお邪魔させていただいたんですけど、2016年の1月から8年以上続けていて、毎月開催することにこだわったのはどうしてですか?

森谷さん 毎回来るのはハードルが高いじゃないですか。だから、運営側が頑張って継続して、2、3ヵ月ぶりにでも来られる場所を作りたいなと思いました。1度来た人が、その数年ぶりに来てもいいし、2ヵ月に1回でもいいし、来れなくてもそんなに後ろめたくならないようなユルさのある場所が大事かなと思ったんです。

――「葛飾会議」を続けてきたことによって何が生まれたかなって思いますか?例えば、今日も「オオシマナイト」にたくさんの人にお集まりいただいて、いろんな分野の人が繋がれたなって思う反面、一過性で終わっちゃう感じもしていて。続けることで生まれるものってなんでしょうか?

森谷さん 人を紹介できる関係値ができたのが、やっぱり1番大きいかなと思います。誰かに「こういう事を知ってる人はいるか」と聞かれた時に「あっ、あの人いるじゃん」と紹介できますよね。

足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」にて
足立区千住旭町にある古民家カフェ「路地裏寺子屋rojicoya」にて

森谷さん あと、単純に自分たちが楽しいですよね。いろんな人が、いろんなところで活躍してるのを見ると。あの人、頑張ってるな、って刺激にもなりますしね。

――人の紹介で言うと、具体的なエピソードとかありますか?

森谷さん 「葛飾会議」の2年目ぐらいの時に、クラウドファンディングで2,000万円もいったみたいな人が地元に出てきたんですよね。その人をTwitterでスカウトしたら「葛飾会議」に来てくれて。

葛飾区の町工場の社長さんはその人と繋がったことで、BtoCをやったことがない社長さんたちが「自分たちもクラファンをやれるんだ」っていうのを知ってもらえたので、あれはすごい良かったなって思います。葛飾区でクラファンブームが起こってましたね。

――森谷さんは、全国の子ども食堂を支援する「むすびえ」や、子どもたちにプログラミングや演劇の体験を通して表現教育する「ココロエエデュケーションラボ」など、いろんな活動をされてますが、「葛飾会議」をやることによって起こる活動同士の科学反応みたいなものってありますか?

森谷さん それこそ、さっき紹介した葛生さんから「葛飾区の柴又で古民家が出たから、子ども食堂として使ってほしい」って、つい最近に声をかけていただけたのはとてもありがたかったです。

その子ども食堂は、8月ぐらいにオープンで今準備しているところですが、地域の子ども食堂をやっているメンバーも巻き込んで、地域の食材庫にもしたいなと思ってます。

――森谷さんは地域のステイクホルダーとめちゃくちゃ繋がってるし関係がすごい深いなって「葛飾会議」に出席して思ったんですけど、どうしたらイイ感じの関係を築いていけるんでしょうか?意識していることはありますか?

森谷さん やっぱり“フラット”であることを意識し続けていますね。

例えば、最初は政治も宗教もNGにしてたんですが、もし政治家の方を呼ぶ時には、ちゃんと派閥ごとにみんな来てもらうとか全員に声はかけるとかを意識する、っていうことは地域活動の先輩たちに教わりましたね。

――“フラット”は、コミュニティにおいては超大事ですよね。

楽しみながら続けることが大切と話す森谷さん

――「葛飾会議」が100回目を迎えましたが、今後の展望とかってありますか?

森谷さん ないです。継続するだけです。もうそれだけでも、しんどいじゃないですか(笑)

僕以外の立ち上げメンバーが4年目ぐらいに大学院に行ったり起業したりで抜けたんです。そのあと2年くらいはなんとか1人で乗り越えてたんですけど、1人でやってるのがもうしんどくなってたから、もうやめようかなと思ったことがあったんですよね。

それで、忘年会でいつも来ている仲間たちにぼそっと話したら、すごく良かったのが「じゃあ、持ち回りにしましょうよ」って言ってくれて。なので、1年に12回「葛飾会議」をやっていますけど、僕が仕切るのはだいたい1回とか2回とかで、あとはもう他の仲間にお任せ。僕も参加者として楽しめる、みたいな状況になったんです。

――めっちゃいいですね。森谷さん自身は今後どうなっていきたいとかってありますか?

森谷さん 特にないんですけど、もっともっといろんな人と繋がりたいですかね。今日みたいに葛飾区以外の方と繋がる機会はすごくありがたくて、葛飾区だけで止まっちゃってる仲間も多いので、色んな人と繋がっていくってのは大事かなと思ってます。

――“すんでるまちを、せまく”して、今度は“そこを飛び出す”ってことですね。今日はありがとうございました。

葛飾会議
ホームページ
http://katsushikakaigi.com/

「ガチアダチ サミット」登壇者の森谷哲さん(右)と、聞き手の大島俊映(左)
「ガチアダチ サミット」登壇者の森谷哲さん(右)と、聞き手の大島俊映(左)

登壇者=森谷哲さん

聞き手=大島俊映(トネリライナーノーツ編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/

編集補佐=しまいしほみ(トネリライナーノーツ 編集者)
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撮影=山本陸(トネリライナーノーツ カメラマン)
トネリライナーノーツ記事
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