“健康ってなんだろう?”あの日を境に変わった、健康への価値観 【ほぼ月刊かしづき 第1号】

ほぼ月刊かしづき

足立区加平で月に数回営業する「駄菓子屋 かしづき」は、地域に佇む普通の駄菓子屋でありながら、保護者が様々な子育ての悩みを聞ける場であり、また、子どもが安心して気軽に来られる場でもあります。そんな「駄菓子屋 かしづき」の店主である佐々木隆紘さんが、自身の想いや物語を綴る連載が「ほぼ月刊かしづき」です。

第1号は、「“健康ってなんだろう?”あの日を境に変わった、健康への価値観」をテーマにお届けします。

「駄菓子屋 かしづき」店主の佐々木隆紘さん
「駄菓子屋 かしづき」店主の佐々木隆紘さん

私は2009年に理学療法士という資格を取り、新卒から12年間、医療現場で患者さんのリハビリテーションに努めてきました。
「痛みに悩まされている方々の痛みを解消して、健康に生きられる人を増やしたい」
「“あの人に診てもらえば何とかなる”と思ってもらえる治療家になりたい」
国家資格をとった当初は、そんな事を思いながら技術の研鑽を積みました。

そんな私が、なぜ今、駄菓子屋をやっているのか。今回の記事では、その背景にある「健康ってなんだろう?」を問い続けてきた自分に起こった、健康に対する価値観の変化について書きたいと思います。

駄菓子屋「かしづき」の暖簾
「駄菓子屋 かしづき」の暖簾

理学療法士になったキッカケ、そして、実際になってみて

私は幼少期の頃から、身体や健康の事に興味を持った子どもでした。中学校時代、ソフトドリンクを飲んだりスナック菓子を食べたりするのはすでにやめていて、卒業研究のテーマを「筋トレとストレッチ」にするか「食品添加物について」にするかで悩んでいたぐらいです。(結局、食品添加物は難しすぎるのでやめましたが)

そこから理学療法士を目指したのは、高校時代に自分自身が怪我をしてリハビリを経験した、という理由が1つ。そして、小学生の頃からバスケットボールをやっていたので、バスケに関わる仕事として、理学療法士になって怪我をした選手のリハビリに関わりたい、という理由も1つ。

理学療法士の養成校に入学後は、実習で整形外科クリニックへ行き、そこで即座に患者さんのパフォーマンスを変化させて、痛みを解消する場面を目の当たりにしました。それに衝撃を受け、冒頭にも書いたように「自分もこんなふうに患者さんや選手の痛みをすぐに解消できる理学療法士になりたい!」と思ったのです。

小学校の頃から始めたバスケットに、ずっと関わりたいと考えていました
小学校の頃から始めたバスケットに、ずっと関わりたいと考えていました

国家試験を合格した後は、整形外科クリニックへ就職。また同時に、母校のバスケットボール部へ赴き、休日に選手の身体のケアのお手伝いをさせていただく事にもなりました。

こうして、自分の希望通りに、医療とスポーツの現場に身を置き始めましたが、痛みというのは単純ではありません。その場では「痛みが楽になった」と言われても、翌週には「やっぱり痛い」と言われる、そんな事が多々ありました。

自分の技術がまだまだ不足しているのが原因だと思い、休日は毎週のように研修を受けて、知識や技術を研鑽する日々を過ごしました。もちろん、こういった時期も無駄ではありません。しかし、今になってみると、人間についての捉え方が狭く、痛みに関する理解も浅かったのだと思っています。

母校でのボランティアでは、全国大会にも帯同
母校でのボランティアでは、全国大会にも帯同

震災で変わった価値観

社会人2年目を終える頃に、転機が訪れました。2011年3月11日、東日本大震災が発生してしまったのです。当時は横浜のクリニックに勤めていましたが、クリニックが入っているビルが、隣のビルとぶつかって、大きな音を立てていたのを今でも覚えています。

テレビをつけると、変わり果てた東北地方の状況が映りました。その時に強く感じたのは、「普通に生きている」のが、本当に恵まれているという事でした。命があり、帰る家もあり、恵まれた状況の私。被災地の方々に対して、少しでもできる事があるはずだと思い、被災地のリハビリボランティアに参加しました。

しかし、そこで被災地の方々と接して思い知らされたのが、「私にできることは何もない」という厳しい現実でした。痛みを取り除くための治療技術ばかりを研鑽していた私は、被災地で求められているものを汲み取れず、何もできません。とても無力で、むしろ、邪魔者であったとさえ感じられたのです。

被災地では、当たり前の日常が幸せだと気付かされました
被災地では、当たり前の日常が幸せだと気付かされました

これを機に、痛みをとる治療ばかりに囚われていた私の価値観は、大きく変わりました。もちろん、理学療法士として治療技術は大切なのですが、痛みを取り除くというのはその人が健康に生きるための手段の1つでしかないという事、本当の目的は、健康に生きるお手伝いをするという事に気付いたのです。

それからは「そもそも、健康ってなんだろう?」という事を問い続ける日々が始まりました。みなさんは、健康ってどういう状態だと思いますか?その問いを深掘りするのは、また次回に。

「駄菓子屋 かしづき」に並ぶ駄菓子の数々

駄菓子屋 かしづき
住所
東京都足立区加平1-12-3
ホームページ
http://dagashiya-kashizuki.com/
Instagram
https://www.instagram.com/dagashiya_kashizuki/

 「ほぼ月刊かしづき」執筆者の佐々木隆紘 (撮影:山本陸)
「ほぼ月刊かしづき」執筆者の佐々木隆紘 (撮影:山本陸)

文=佐々木隆紘(トネリライナーノーツ サポーターズ)
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