「健康とは、“状態”ではなく、“能力”である」 ほぼ月刊かしづき 第2号

足立区加平で月に数回営業する「駄菓子屋 かしづき」は、地域に佇む普通の駄菓子屋でありながら、保護者が様々な子育ての悩みを聞ける場であり、また、子どもが安心して気軽に来られる場でもあります。そんな「駄菓子屋 かしづき」の店主である佐々木隆紘さんが、自身の想いや物語を綴る連載が「ほぼ月刊かしづき」です。
第2号は、「健康とは、“状態”ではなく、“能力”である」をテーマにお届けします。

 「駄菓子屋 かしづき」店主の佐々木隆紘さん
「駄菓子屋 かしづき」店主の佐々木隆紘さん

前回の第1号では、「健康ってどういう状態だと思いますか?」という問いを投げかけて、記事を終わりましたので、その続きについて綴っていきたいと思います。先に結論を書いてしまうと、今回の第2号のタイトルの通り、前回の問いに対する「問いの再設定」をしていきます。

「駄菓子屋 かしづき」 のホワイトボード
「駄菓子屋 かしづき」 のホワイトボード

WHOの健康に対する定義、そこへの疑問

「身体が健康ならば、健康?」とか「病気でなければ、健康?」とか、そのように考えられていた時代もあります。1946年に作成された「WHO(世界保健機構)」による健康の定義は、以下のように記載されています。

「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.(健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病または病弱の存在しない事ではない)」

この文言を聞いた事がある方もいるかもしれません。私はこの定義を見たときに「そりゃそうだな」と思う部分と「よく分からん」と思う部分がありました。

「単に疾病または病弱の存在しない事ではない」という部分に関しては、「そりゃそうだな」と感じました。実際にクリニックで関わる患者さんの中には、痛みが取れて治っても、元気がなかったり、社会的に孤立をしていて活動量が増えなかったりする方がたくさんいます。そういった方々と関わっていても、健康だとは思えないからです。

「駄菓子屋かしづき」の目玉商品
「駄菓子屋かしづき」の目玉商品

反対に痛みがあっても、海外旅行に行ったり趣味に没頭したりしている患者さんと関わると、とても健康的だと感じます。骨の変形があったり痛みを抱えたりしていても、とても生き生きとしているように見えるのです。

この違いはなんでしょうか?精神面・社会的背景などの違いは確かにあるでしょう。そういった意味ではWHOの定義もしっくりくるかもしれません。

しかし、後者の生き生きと見える患者さんは、WHOの定義にあるように「肉体的に完全に良好な状態」でしょうか?変形もあるし痛みを抱えている事実は変わりません。私がWHOの定義で「よく分からん」と感じたのは、この部分です。

「駄菓子屋かしづき」に遊びにきた子ども
「駄菓子屋かしづき」に遊びにきた子ども

“ポジティブヘルス”という考え方

「肉体的に完全に良好な状態」という言葉の意味は、今もまだよく解らないのですが、とある方が提唱した健康の概念がとても腑に落ちたので、紹介させてください。

「Health as the ability to adapt and to self-manage, in face of social, physical and emotional challenges.(健康とは、社会的・身体的・感情的な問題に直面した時に適応し、本人主導で管理する能力)」

これは、2011年にオランダのヒューバーさんという家庭医の先生が発表した“ポジティブヘ ルス”という考え方です。この考え方は、健康を静止した「状態」とするのではなく、それが個人や社会で変化させられる動的なものであり「能力」と位置付けています。「疾患や障害があっても、周りの力などを支えにして、気落ちする事なく人生を前向きに歩いて行ける事、その力こそが健康」とする概念です。

この概念に出会って、私はこれまでモヤモヤしていたものがクリアになったように感じました。以前の痛みをとる事ばかりに囚われていたのは、健康とは「状態」だと考えていたからだと思います。

「駄菓子屋かしづき」の様子
「駄菓子屋かしづき」の様子

痛みのない状態、麻痺のない状態、孤立のない状態。そういった「状態」が健康だと考えていたから、それを解消する手段(技術の研鑽)に躍起になっていたのかもしれません。こういった考え方では、生まれつきの病気を抱えている子どもや、もう治らない疾病を抱えている方々の健康を否定するようなもの。そうではなく、どんな状態・状況であっても、そこに適応して前向きに生きていく力こそが健康だと気付かされました。

障害とは個人が持つものではなく、社会との関係性の中で生じるものです。その障害を取り除いていく事が、健康に生きられる人を増やす上で非常に重要になってくるのではないでしょうか。それは医療の枠組みの中だけで片付く問題ではありません。

前回の記事にも書いたように、多くの患者さんとの出会いや被災地での経験が、「健康って何だろうか?」という問いを突きつけてくださり、私の考え方を変遷させてくれました。この変化はとても良い変化だったと振り返ってみて思います。

現在、駄菓子屋をはじめた理由も、こうした流れがあってのことです。なぜ駄菓子屋なのか?という話は、また改めてご紹介します。

「駄菓子屋 かしづき」は夫婦で店番を
「駄菓子屋 かしづき」は夫婦で店番を

駄菓子屋 かしづき
住所
東京都足立区加平1-12-3
ホームページ
http://dagashiya-kashizuki.com/
Instagram
https://www.instagram.com/dagashiya_kashizuki/

 「ほぼ月刊かしづき」執筆者の佐々木隆紘 (撮影:山本陸)
「ほぼ月刊かしづき」執筆者の佐々木隆紘 (撮影:山本陸)

文=佐々木隆紘(トネリライナーノーツ サポーターズ)
Instagram
https://www.instagram.com/t.sasaki.presents/
Twitter
https://twitter.com/sasataaaaa
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/sasaki/

Share this: