「トネリライナーノーツ」編集長である大島俊映が、地域コミュニティへの想いや地域活動の裏側を描く連載が「編集長は話が長く、書くのが遅い」です。
第1話では、「トネリライナーノーツとは、なにか?」をテーマに、遅々と進まない筆でお届けします。本当は飲み会で聞いてほしいです。
これを書き始めたのが、小1の長男の夏休み最終日となる8月31日。
私の本来の仕事は足立区古千谷本町にある「全學寺」の副住職で、スペシャルティコーヒーを無料で淹れる「ゼンガクジ フリー コーヒー」というコミュニティの代表もしている。8月中旬の盂蘭盆会という1年で最も忙しい時期を経て、家族旅行・お寺の駐車場での手持ち花火まつり・日本橋での出張フリーコーヒーと立て続けのイベントをこなしてきた。
つまり、読者のみなさんになにを伝えたいのかと言えば、忙しくしていたせいで「トネリライナーノーツ」の記事のストックがないのだ。ストックがないなら、もう自分で書くしかない。編集長なんだから。
夏休みの宿題を終えられていない小学生のような気持ちで、この記事を書こうと思う。題して、「トネリライナーノーツ」とは、なにか?編集長になって丸3年、その想いをここに。
トネリライナーノーツとは、なにか?
―トネリライナーノーツは、「応援は、応援を呼ぶ」をDNAに、足立区・荒川区の物語を届けるWebメディアです―
「トネリライナーノーツ」のaboutページの冒頭には、上記の記載がある。「トネリライナーノーツとは?」と問われたらこれが全てなのだが、もう少し解像度を上げてみる。キーワードは、以下の3つ。
- 足立区・荒川区
- 物語を届ける
- 応援は、応援を呼ぶ
足立区・荒川区
スタート前に「トネリライナーノーツ」は、「全學寺」の最寄駅が舎人駅なこともあって、「日暮里舎人ライナー沿いの地域メディアにしよう」と考えていた。が、しかし、スタートしてすぐに舎人ライナー沿いの知り合いがあまりいないことに気付いて、すぐに「足立区・荒川区の地域メディア」に変えた。※今では友人がたくさんいます。
この時に、自分が拠点としていた“足立区だけ”のメディアではなく、“足立区と荒川区”の地域メディアにしたことが、今考えると良かった。なぜなら、地域コミュニティは横断してこそ(外側に出てこそ)価値があると考えているからだ。足立区という地域コミュニティも、荒川区という地域コミュニティも、また、足立区古千谷本町も、足立区舎人も、足立区入谷も、その地域コミュニティの範囲となる線を引いたのは私たち住民ではなく行政(民主主義)である。
インターネットの登場以降、世界がボーダレスになっていく中で、行政が決めた内側だけで活動していくのはあまりにもったいないと思う。そんな想いから、足立区・荒川区の“外側”で活動している人に話を聞く連載「のりかえライナーノーツ」を始めたし、お寺から出て全国各地でフリーコーヒーを行う「めちゃくちゃフリーコーヒー」も始めた。
「トネリライナーノーツ」は、足立区や荒川区はもちろん、その外側にある地域コミュニティの“物語”も積極的に取り上げていく編集方針だ。
物語を届ける
「トネリライナーノーツ」において失敗だったと思う企画が、今年2月まで続けていた「サポーターズPR」という“情報”記事だ。地域で活動する人と定期的にメッセージのやり取りをしてコミュニケーションを取ること、そして、記事数を稼ぐことを目的にやっていたが、「それ、SNSでよくね?」という内なるツッコミを無視して、長く続けてしまった反省がある。
「サポーターズPR」をやめて、今は“物語”記事を作ることを意識している。SNSで代替されず、時間が経過しても風化しない物語を。例えば、「舎人線寫眞(トネリライナーポートレート)」は“写真1枚でその人の物語を届ける”のがコンセプトだし、「サポーターズPR」が終わった直後に始めた「ダチアダチ」も“地域活動の情報ではなく物語を”という想いから。
「トネリライナーノーツ」編集部が作る取材記事は、言わずもがな。“モノ”や“コト”ではなく、取材した“ヒト”にスポットが当たるように、物語を綴っているつもりだ。余談だけれど、「サポーターズPR」をやめると決めて以降 (つまり、2023年に入ってから) の私の記事(つまり、2023年に入ってからの記事)は、グンっとクオリティが上がったと思うから読んでみて。
地域の物語を届けることが、記事の登場人物にとっても、記事の読者にとっても“応援”になると信じている。
応援は、応援を呼ぶ
厚生労働省のホームページによると、2070年には総人口が9,000万人を割り込んで高齢化率は39%の水準に、2025年には75歳以上の人口が全人口の約18%となり、2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されている。少子高齢化が進んでいるということは、人口が減って現役世代が減るということは、地域という文脈では資本主義下での評価指標である「お金」が減っていくということ。地域が貧乏になっていく未来は避けられないだろう、たぶん。
ただ、貧乏になっても、心の豊かさは生み出せるはずだ、きっと。そのために、地域の文脈には新しい評価指標が必要で、私たちはそれを“応援”に定めた。
「トネリライナーノーツ」では、「応援」こそが最高のコミュニケーションであると定義して、地域で活動する人を誰よりも「応援」するミッションを背負い、「応援」が循環する地域を創ることをビジョンに掲げた。
「トネリライナーノーツ」の運営には、もちろんお金がかかる。お金をかけてでも、記事という形で「応援」を創造するのだ。その記事を読んだ人が、新たな「応援」を創造してもらえたら、地域はより豊かになると確信しているから。応援は、応援を呼ぶ。
トネリライナーノーツとは、なにか?の補足
学生時代の友人がITの分野で起業・上場したが、その企業のビジョンは、インターネットを使って「誰もが価値創造に夢中になれる世界」を創る、だった。めっちゃイイなと思った。
規模感は全然違うけれども、私がやりたいことも同じだ。「トネリライナーノーツ」を使って「誰もが(応援という)価値創造に夢中になれる地域」を創りたい。
日々の生活の安心・安全は、資本主義と民主主義による両輪の土台の元に成り立っている。だから、起業や投資で成功した友人には「地域活動の支援にお金を使った方が良い」と薦めるし、地域活動でお金がない友人には「予算の作り方を学んだ方が良い」と諭す。
だけれど、それはそれとして、みなさんもたまには資本主義と民主主義の外側で遊んでみたらどうでしょう?お金も多数決も関係なく、自らの偏愛や熱狂を形にする活動を。「トネリライナーノーツ」もフリーコーヒーも、そんな想いで続けています。
文=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/