「子ども食堂をやる理由」たべるばシェフからの手紙 1通目

日暮里舎人ライナー地域をはじめとした足立区の子どもたちに対して、ひとりで食事をする「孤食」と偏った食事をする「固食」をなくすために活動している「あだち子ども食堂 たべるば」で、シェフとして子ども食堂を支えているのが長澤匠さんです。
そんな長澤さんが、子ども食堂の活動を通じて感じたことを綴る、たべるばシェフからの手紙。
1通目は「子ども食堂をやる理由」についてお届けします。

子ども食堂の料理を準備している長澤さん
子ども食堂の料理を準備している長澤さん

幼少期の自分

私は幼い時からなかなか友達ができず、孤独な日々を過ごしていました。家系がカトリックの信者ということも影響していたのか、他の子と違う感性をしていたためなのでしょう、周囲に馴染めずにいました。毎週土曜日と日曜日に教会に行くのですが、年々教会に通う子どもの数は減っていき、小学6年生の時は教会に行く子どもが自分一人ということもあり、寂しい時期を過ごした記憶があります。

また、家庭内では、小学校高学年から中学生の時期にかけて荒れていくことになります。学校の成績は悪く、それを親から批難されることが多く、両親との関係が中学の頃には崩れていました。非行に走ることはなかったのですが、彼らを一切信頼できなくなっていました。その頃から、子どもの居場所について考えることが多くなりました。当時の自分には逃げ場が無く、教会も落ち着ける場所ではなかった。気持ちが疲れていたのでしょう。深刻に考えていたのを覚えていました。

いつか、必ず子どもが安心していられる場所を作りたい。

その願いを持って、教会の日曜学校・障害者施設へのボランティアや児童養護施設のバイトへ赴き、子ども達や生活している人と直に接する中で、自分と向き合いつつ、信者として一人の人間として、本来目指すべき姿を模索してきました。

看護師として、料理人として

ある時、転機がありました。当初、心理学に携わる仕事に就こうと考えていたのですが、たまたま入職していた療養型の病院で介護士として働いていた時、障害者施設でも看護師さんがいて、対象の子の特性や性格を正確に把握して助言をしていたことを思い出し、いろんな場所、いろんな人に対してケアをできるのだと思い、看護師を目指すことにしたのです。

看護師になる勉強をしていく中で、「子ども食堂」という存在を知り「子どもが安心していられる場所を作りたい」という自分の思いと重なりました。そこで国家資格を取ったら必ず子ども食堂に携わり、運営していきたいと思いが再燃。自分にとって、看護師以外の強みはなんだろうと考えたところ、「料理」以外に浮かびませんでした。

准看護師の資格をとって間もない頃というのは、予防医学の勉強で食の知識を取り入れていた時期でもありました。また、学童期から料理をするのが好きな子どもだった私は、教会学校でも子どもたちに料理を振る舞っていたこともあり、改めて、学校を卒業して国家資格を取得し、区切りがついたら子ども食堂の現場に入ろうと考えました。平成30年(2018年)に看護学校を無事に卒業し、看護師国家資格を取得しました。それから1年は病院勤めをしつつ、子ども食堂フォーラムに赴き、日本の置かれている現状を知るために講習会に参加。子ども食堂の必要性をますます実感し、自分の意思を固めていきました。

「あだち子ども食堂 たべるば」の運営メンバーと

たべるばに参加して

どこの子ども食堂に携わるかネットで検索したところ、思った以上にたくさんあり、悩んだ末に「名前」で選ぶことにしました。私はよく料理を作り過ぎるので、そういったところを上手く利用したいなぁと思っていました。そんな中で「あだち子ども食堂 たべるば」という名前を目にし「ここなら作り過ぎても大丈夫そう」と、調理ボランティアへの参加を表明したのがきっかけです。2019年の2月頃に初めて来させていただき、久しぶりに子どもと関わるのでかなり緊張していたのを憶えています。

子どもと関わるのは10年前の教会学校と看護学校の小児実習以来で、最初の2、3ヶ月は緊張していました。昨今は特に「今の子はよく分からない」といった話を聞きますが、実際に触れ合ってみると10年前とかと変わりがなかったのが印象的でした。そんな中で私は、気になった子には声をかけていくようにして触れ合っています。

高校生ボランティアが来ていること、彼らが子どもと関わっている姿を見て、教会を思い出しました。世代間交流ができていて、子どもたちが自由に過ごせているので「自分の理想がここにあるなぁ」という印象でした。お母さん方も安心していられる場所にもなっていることも強いと思いました。子どもの健全な成長には、母親の精神安定が大切です。特に乳児期、幼児期は母親の精神状態が子どもに伝わりますし、悩みやつらさを話せる場所は重要です。

私見ですが、子育てで大切なことはたくさんあるものの、まずは母親が精神的に安定していられるのが何よりも優先されるべきだと思っています。子どもを育てていくために親は必要です、でも、それを支援できる環境はもっと大切になってきます。子どもは成長し、大人になっていく。そして、結婚して子どもを授かり、親になっていく。その過程の中で「してもらえた」良かった記憶は常に継承していくのです。

成長するにつれて、一人、また一人と、子どもたちの足は教会から遠のいていきます。でも、そんな子も、教会のバザーやキャンプなどのイベントで手伝いに来てくれることがあります。子ども達はしてもらったと大人側の愛情を実感すればするほど、安心して分離(自立)します。そしてそういう子は、大人側の力になってくれるんです。良かった記憶を子ども達に今は何も感じなくても、思わなくても良い。それが10年後20年後に花咲いてくれる関わりであるように、たべるばに参加させてもらっています。

あだち子ども食堂 たべるば
ホームページ
https://adachi-taberuba.wixsite.com/index
YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCqPHmF-hi9iQALI3TV5PhQA
たべるば関連の記事
https://tonerilinernotes.com/tag/taberuba/

「たべるばシェフの手紙」執筆者の長澤匠

文=長澤匠(「トネリライナーノーツ」サポーターズ)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/nagasawa/

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