「料理をする事」たべるばシェフからの手紙 2通目

たべるばシェフからの手紙

日暮里舎人ライナー地域をはじめとした足立区の子どもたちに対して、ひとりで食事をする「孤食」と偏った食事をする「固食」をなくすために活動している「あだち子ども食堂 たべるば」で、シェフとして子ども食堂を支えているのが長澤匠さんです。

そんな長澤さんが、子ども食堂の活動を通じて感じたことを綴る、たべるばシェフからの手紙。
2通目は「料理をする事」についてお届けします。

左が長澤匠さん、たべるばのメンバーと
左が長澤匠さん、たべるばのメンバーと

その人の味

私は幼い時から料理をしてきました。その経験の中で見えてきた大切なこと、それは誰にとっても「その人の味」があることです。そして、私にとって「その人の味」を守ることは、家庭の文化を守るのに繋がると考えています。

味の好みというのは主観なので、その人の舌に完璧に合った料理を生み出すことは非常に難しい。ですが、そんな料理を作り出せる人がいます。

それは腕利きのシェフでも老舗の店主でもなく「その人」の「母親」。人によっては「父親」かもしれません。料理における好みは、幼い頃からの食卓によって形成されていくからです。

どの家庭でも、自分に合った食事を提供してくれるのは「親」なのです。

たべるばの味

子ども食堂で提供する私の食事は、必ず出汁を引くことをしています。たべるばにおける私の料理は、子どもたちへのプレゼントであり、だからこそ、可能な限り手作りで提供したいと思っています。

前回の「たべるばシェフからの手紙」で、子どもが成長して大人になっていく過程の中で「してもらえた」良かった記憶は常に継承していく、と書きました。つまり、いつも食べる好みの料理は、やがて子どもたちにとって良い記憶となり、「その人の味」になると確信しています。

「味」の記憶は例え認知症になったとしても残るので、今味わった記憶は未来において、あの時のあの味だと必ず思い出します。だから、私の作った料理が子どもたちにとって良い思い出になってほしいと願いながら料理させてもらっています。

私の料理が彼らにとっての「その人の味」になったとしたら、そして、それを子どもたちが次の世代に繋げてくれたら、私にとってとても幸せなことだなぁと思っているのです。

家庭の味は

もちろん、本来は私の料理ではなく、親から子へ「家庭の味」が繋がっていくことが望ましいし、それを強く望みます。

私の母方の祖母が亡くなってから、母が祖母の味を再現していた時期がありました。それを見て、「その人の味」は誰にとっても唯一無二で、どんな名店よりも大切なものなのだと教わりました。私の母はどんなに忙しくても、帰宅してから必ず食事を作ってくれる人でした。

また、母の妹である叔母は、私がここまで料理を追求するきっかけになる存在でした。彼女はよく手作りをする人でしたが、自分の娘に味を伝える事なく生涯を終えました。その姿を見て、一つの文化がなくってしまったようで悲しく思えました。

「母親の味」は「家庭の味」で「想いの塊」です。それを与えられてきたからこそ、たべるばでは手間がかかろうが、手作りであることにこだわりたいのです。

とはいえ、私は量を作る人なので、子どもたちの「その味」にならなくてもいいか。今、思う存分に食べてもらえることが、何よりも一番かもしれません。

あだち子ども食堂 たべるば
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「たべるばシェフの手紙」執筆者の長澤匠

文=長澤匠(「トネリライナーノーツ」サポーターズ)
トネリライナーノーツ記事
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