地域の子どもたちへの食事支援プロジェクト「にぎりむすびギフト」では、足立区東伊興のおにぎり屋「にぎりむすび」の栄養満点のお弁当を、地域の子ども団体(NPO法人や子ども食堂)を通じて、それを必要としている子どもたちに無料で継続して届けています。この連載は、「にぎりむすびギフト」に関わる人たちの物語を描く「Team NIGIRIMUSUBI Gift」です。
今回のvol.2では、足立区東伊興のおにぎり屋「にぎりむすび」の店長を務める伊藤美香さんを取材しました。「にぎりむすび」はこのプロジェクトの舞台、色々な方たちの想いを弁当というギフトの形にするのが、お店の女性スタッフたちの仕事です。聞き手は、トネリライナーノーツ編集長で、「にぎりむすびギフト」主宰の大島俊映が務めます。
(取材日:2021年7月9日)
「にぎりむすび」の伊藤美香さん
新潟県出身。愛称は「みかさん」。
大学入学と同時に上京、ご主人との結婚を機に足立区へ移り住む。
「にぎりむすび」女将の山本亜紀子さんとは、ベビーダンスやベビーマッサージを通じて知り合い、ほどなくして、山本さんが運営する子育て応援団体「コミュニティKoen」の運営メンバーに。イベントなどの手伝いを経て、現在はオープンしたばかりの「にぎりむすび」で店長として働く。
にぎりむすびでの仕事
――にぎりむすびは3月31日にオープンしました。ここまで働き続けてみて、どうですか?
みかさん 楽しさ半分、不安なところ半分ですね。楽しい部分で言うと、お客さんと直接コミュニケーションが取れるのと、やる気があって前向きなスタッフのみんなと、お店を一緒に作り上げていってる感じがします。
――逆に、不安なところは?
みかさん やはり飲食店なので、売上げに波があります。お客さんと近いからこそ、評価してもらえるまでもっと頑張らないといけないですし、それがお客さんの数に繋がるのかなと思っています。
――実際の仕事の流れも教えてください。
みかさん お店に朝着いたら、出汁やお米の仕込みからです。ベジベジとん汁を作って、にぎりむすびの具を仕込んで。もし事前にお弁当の注文があれば、営業前に完成させて。これで、1時間半ぐらいかかりますね。そこから、営業が始まります。
――にぎりむすびを握る時に大事にしているポイントはありますか?
みかさん 「ふんわり」ですね。もし冷めても、食べた時に口の中で、ふんわり感が残るように。それに、塩加減と、見た目も。ぱっと見で美味しそうと思ってもらいたいので、綺麗に仕上げるように意識しています。それが出来るようになるまで、(事業チームの)大島さんにはイジメられましたからね(笑)休みの日に、にぎり娘(お店の女性スタッフ)みんなで自主練をしてっていうのを、ほぼ毎週のように2ヶ月続けました。だから、今は美味しく握れるようになったと思いますし、握っていて楽しくなってきましたね。
にぎりむすびと“あっこさん”
――みかさんは「にぎりむすび」で店長という立場ですけど、そのあたりはどうですか?
みかさん スタッフが働きやすい環境にあってこそ、お店の雰囲気が決まるかなというのがあるので、みんなの意見をまんべんなく聞ける立ち位置にいたいですね。それと、自分自身は、決して料理が得意でも、資格を持っているわけでもなくて、スタッフと一緒に成長してスキルアップしたいと思っています。だから、私からスタッフにやり方を聞いて参考にしたり、それをみんなに周知したりしていますね。そういうのは地道な作業ですけど、いまだに毎日のように続けています。
――そもそも、にぎり娘になったのは、女将の山本さんから誘われたんですよね?
みかさん 最初に誘われたのは、(にぎりむすびがある)コミュニティKoenてらまちハウスがオープンする前、庭の草刈りを手伝っている時でした。「みかさん、スタッフとしてどう?」って、あっこさん(山本さん)に言われて。接客は好きなんですけど、調理に自信がなかったので、最初は渋りました(笑)それでも、オープン前のイベントで一緒になった、ちほさんと働けるのならば楽しそうだなっと思って、やる事にしたんです。ちほさんはご主人の急な転勤があって、お店をやめてしまいましたけれど。
――あれは残念でしたね。では、みかさんから見て、山本さんってどういう人ですか?
みかさん あっこさんは、フワフワしていそうだけど、実のところ、その中に芯があると思います。お喋りしていてもフワフワしていて、それが人を引き寄せる魅力になっているんですけど、ブレない部分は絶対にありますよね。それに、ここまで事業性がある事を始めると思わなかったので、尊敬しています。
――大丈夫ですか?そんなに良いことばっかり言って(笑)
みかさん (笑)にぎりむすびを一緒に作り上げていく側としては、もっと胸を張って、もっと引っ張っていってほしいとは思います。やっている事はすごく素晴らしいし、応援したいと思ってくれている人がたくさんいるので。あっこさんがそうなってくれたら、にぎり娘たちも今より成長できるかなと感じています。
「にぎりむすびを、短く終わらせたくない」
――今後、にぎりむすびをどうしていきたいですか?
みかさん にぎりむすびを、短く終わらせたくないですね。とにかく。「にぎりむすびギフト」の食事を何歳ぐらいの子たちが食べているかは分からないですけど、その子が何年後かに自分で働いたお金を持ってお店に買いに来てくれて、「実は、ギフトをもらっていたんです」と言ってくれたら、それは良いなって。
――素敵ですね。
みかさん 子どもも大きくなったら、にぎりむすびで作ったご飯を食べていたんだな、ってきっと気付いてくれると思うので。そうやって、にぎりむすびギフトを通じてお店にフラっと顔を出しに来てくれるようになった子と、このお店で繋がっていけたら嬉しいですね。
「にぎりむすびギフト」について、みかさんのコメント
「ご飯を食べるのに困っている子どもが、この足立区に本当にいるっていう事に、まずは驚きました。そして、にぎりむすびギフトを通じて、今まで他人事だったその事実が、一気に身近になりました。その中で、にぎりむすびギフトの食事は、お客さんからオーダーをもらって作る普段の営業とは違って、「子どもたちが好きそうなものはなにかな?」とか、「この野菜は食べられるかな?」とかを、スタッフ同士でコミュニケーションを取りながら作っているので、スタッフそれぞれから母性が出ていますね。子どもたちに美味しく食べてもらいたいし、1人のママとして、食べてくれる子に伝えたい想いはあるな、って思っています」
にぎりむすび
住所
東京都足立区東伊興4-14-4
ホームページ
https://nigirimusubi.com/
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取材・撮影=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
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