地域の子どもたちへの食事支援プロジェクト「にぎりむすびギフト」では、足立区東伊興のおにぎり屋「にぎりむすび」の栄養満点のお弁当を、地域の子ども団体(NPO法人や子ども食堂)を通じて、それを必要としている子どもたちに無料で継続して届けています。この連載は、「にぎりむすびギフト」に関わる人たちの物語を描く「Team NIGIRIMUSUBI Gift」です。
今回のvol.4では、足立区栗原にある訪問看護リハビリステーション「白樺」や、医療介護を支える「大樹」の代表を務める明石光一さんを取材しました。明石さんは、「にぎりむすび」の近所にある「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」においては、セラピストとして奥様のお手伝いをされていて、「にぎりむすびギフト」のスポンサーにもいち早く名乗りを上げてくれた方です。
聞き手は、トネリライナーノーツ編集長で、「にぎりむすびギフト」主宰の大島俊映が務めます。
(取材日:2021年8月19日)
「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」の明石光一さん
1983年4月生まれ、大田区生まれ、足立区育ちの38歳。愛称は「あかしさん」。
日常生活をスムーズに送るための応用的動作のリハビリテーションを行うための国家資格「作業療法士」を取得後、町田市の病院や在宅医療の会社などの勤務を経て、足立区で起業。
訪問看護リハビリステーション「白樺」や、医療介護を支える「大樹」の代表を務める一方で、奥様の明石すざなさんが代表を務める「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」では、セラピストとして、身体の土台となる足からのコンディショニングケアを行っている。
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作業療法士になったキッカケ
――作業療法士になろうと思ったキッカケってなんですか?
あかしさん 家族の影響で、小学校2年生の時には決めていましたね。1つは母が看護師で訪問看護の立ち上げの仕事をやっていたので、医療系の世界には元々興味がありました。もう1つは、僕は3人兄弟の真ん中なんですけど、上の姉が重度の障害児だったんです。
――そうでしたか。
あかしさん そうなると年に何回か、国立のリハビリセンターみたいなところで検査を受けないといけなくて、僕も付いて行っていたんですけど、そういうリハビリセンターには体育館が併設されているんですよ。足を切断してしまったとか、障害を負ってしまったとか、そういう子どもや大人たちが運動する場を提供するために。そんなリハビリセンターの体育館で、僕が小学校2年生の時に、同い年ぐらいの足がない男の子と、手が不自由な女の子と知り合いました。その2人が車いすでバスケをしていて、僕も混ぜてもらったりしたんですけど、それがすっごい楽しくて。
あかしさん その時ですね、作業療法士になりたいと思ったのは。障害を持っていて五体不満足でいる2人が、あんなに楽しそうに過ごしているというのが、いつまでも続いたらいいなっていう想いがあって。その時に2人に付いていたのが、作業療法士の先生でした。
――その体験から約30年、今でも熱い想いを持っているのがすごいですね!
原点は、“和と笑をつなぐ”
――起業についてのお話も伺いたいんですけど、どういった想いで起業したんですか?
あかしさん 学生の時から起業する事が目標だったんですけど、下積みを経て、訪問看護リハビリステーション「白樺」で実際に起業するとなった時には、企業理念を十分に掘り下げて考えました。そこで決めたのが「“和”と“笑”をつなぐ(“わ”と“わ”をつなぐ)」という企業理念です。姉から学ばせてもらったと思っているんですけど、「人は1人では生きていけない」という想いを「和」という字に、「辛い状況であっても笑いがあると救いになる」という想いを「笑」という字に込めました。在宅医療の形って、他人の病気はもちろんのこと、生活を直していくのに特化しないといけないと思っていて、それをこの企業理念で表しています。「和と笑をつなぐ」というのは、僕の原点でもありますね。
――素晴らしい企業理念ですね。それで実際に起業されて、いかがでしたか?
あかしさん 順風満帆にはいかなかったので、本当にがむしゃらに働きました。その間に生まれた子供と触れ合う時間すらもないぐらい、寝る暇を惜しみながら。3日ぐらい寝ない、72時間寝ないでほぼ仕事をしてっていうのが、当時は普通でした。あの時の苦労があるから今があるのかな、と今になって思えるんですけど、3年目に入ったぐらいからしんどくなって、患者さんの前で笑っている自分が笑っているように感じなかったです。いくら使命や信念があっても、肉体の限界はあるんだなって思いました。
――そこから働き方はシフトさせていったんですか?
あかしさん それが中々変えられなかったんです。原因は、不安ですね。手を抜いてしまったら、事業が続かなくなってしまうんじゃないかっていう。だから、そんな風に寝ないで働く日々が、4年ぐらい続きました。その頃に、医療介護を支える「大樹」というケアマネージャーさんの事業も始めたんですけど、この事業も3年以上続けてきて、ようやく安定してきたのはここ3ヶ月ぐらいです。今、うちには30人ぐらいの職員がいますが、未だに結構プレッシャーになっていますね。
「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」と“ソウルメイト”
――今年スタートした「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」についても教えてください。
あかしさん ある時、僕が訪問看護をしていた方に「自分の子どもが発達障害で、ちょっと診てほしい」と言われて、実際にその子を診たところから、「やっぱり、僕は子どもたちを診たいんだな」という想いを強くしました。作業療法士になると決めたのは、先ほどお伝えしたような子ども時代の出来事がありましたし、日本の平均的な教育によって、個性豊かな子どもたちが社会から置き去りにされている気もしているので。それに、子どもたちに対する社会貢献の事業もいずれはやりたいと思っていました。それで始めたのが、「子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜」です。地域の子どもやママに「困ったら相談窓口は、ALOHA.だね」みたいに思ってもらって、地域の中でみなさんと得意な事を役割分担しながら、地域に根差していけたら、大きな社会貢献になると考えています。
――「ALOHA.」の代表は奥様のすざなさんですよね。
あかしさん 嫁さんは看護師で、事業の立ち上げ当初は二人三脚で一緒にやっていたんですけど、出産と育児を経験した事によって、医療という分野よりも、子どもやママに関わる健康予防の分野をやりたいという想いを持っていました。だから、「ALOHA.」は、2人の想いが合致して形になったとも言えます。
――明石さんにとって、すざなさんはどういう存在ですか?
あかしさん ソウルメイトです。夫婦であり、ビジネスパートナーでもあるんですけど、お互いがお互いを高め合う「同志」と言えます。1番信頼しているし、1番の相談相手だし、僕にとって、なくてはならない存在ですね。
「にぎりむすびギフト」について、あかしさんのコメント
「にぎりむすびギフトのコンセプトが、子どもにフォーカスされているのが良いですね。今後は、地域の中で子どもたちを守れるようにしていけなかったら、将来的にその地域は破綻してしまうのではないかと個人的には思っています。だから、「地域で子どもを守る」という一助になっている、にぎりむすびギフトというサービスを応援していきたいです」
子どもとママのからだ工房 〜ALOHA.〜
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取材・撮影=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
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