「YUCCHI COFFEE」店主 ますだゆりかさん 【全學寺じゅずつなぎ 第3回】

全學寺じゅずつなぎ

日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩6分の全學寺にご縁がある人の物語を、職業ライターが紹介する「全學寺じゅずつなぎ」第3回。

今回お話を聞いたのは、全學寺で月に一度オープンする無料コーヒースタンド「YUCCHI COFFEE」の店主である、ますだゆりかさん。ご近所さんやたまたま通りかかった人、噂を聞きつけて訪れた人にコーヒーを提供し、そこでは談笑の輪が広がる。ますださんはどんな人なのか?コーヒーを提供するようになったきっかけなどを聞いた。
(取材日:2021年4月11日)

フリーコーヒースタンドに立つますださん
「YUCCHI COFFEE」店主 ますだゆりかさん

お客として訪れたゼンガクジコーヒー。やがて月に一度のカフェ店主に

舎人駅を最寄りとする全學寺で週末にオープンする「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」(以下、ゼンガクジコーヒー)。その無料コーヒースタンドが、月に一度、ますださんが店主の「YUCCHI COFFEE」となる。元々ますださんは、「ゼンガクジコーヒー」のお客さんだった。

ますださんは、2017年に埼玉の実家から、舎人に越してきた。都内で働くものの、静かな場所で暮らしたかったため選んだこの場所。コーヒーが好きで、近郊にスペシャルティコーヒーが飲めるお店を探す中で「ゼンガクジコーヒー」を見つけ、やって来た。

コーヒーがおいしかったのはもちろん、そこのバリスタである睦美さん(大島副住職の奥さん)と仲良くなったのが、足繁く通うようになったきっかけだ。最初はお客さんとして通っていたが、しばらくすると、大島夫妻から「スタッフとして立ってみないか?」と提案され、時折提供する側に回るようになった。

そして今は、毎週土曜日にオープンしている(クローズの日もあり)「ゼンガクジコーヒー」のうち月に一度の割合で、ますださんが店主の「YUCCHI COFFEE」が営業される。「YUCCHI(ゆっち)」はますださんの愛称で、その日は彼女が選りすぐった豆で淹れるコーヒーとお菓子が無料で提供される。

ますださんのお店は、いずれカフェを開きたいという彼女の夢のサポートしたいという副住職の想いから実現した。

コーヒーを入れる様子
ますださんお気に入りの豆を使ってコーヒーを淹れる

旅先の福岡で一変したコーヒー観と家族の夢だったカフェ運営

ますださんがコーヒーにハマったのは5年ほど前のこと。旅行で福岡を訪れた際に立ち寄った、自社焙煎のスペシャルティコーヒー専門店「REC COFFEE」で、苦味を抑えつつ香り高いコーヒーのおいしさに触れ、最後まで飲めたことに感動した。それまで彼女は、ブラックコーヒーが飲めなかったという。コーヒーのおいしさに目覚めたことで、それからはカフェ巡りがライフワークになった。家の近くにあるショップはもちろん、ネットで気になるお店があれば、そこを目当てに県外でも足を運ぶほどだ。

ますださんはブラックコーヒーが飲めなかった頃から、カフェを経営したいという想いは持っていた。彼女のおじいさんがコーヒー好きで、よく「家族でカフェをやりたい」と語っていたため、それを実現するのが家族のぼんやりとした将来の夢だった。おじいさんはすでに亡くなっているが、ますださんはそんな家族との思い出もあり、今でもいずれはカフェを開業したいと思っている。人と話すことが好きだし、なによりカフェで過ごす何気ない家族の時間が小さい頃から好きだったから、今度は自分がそんな場所を作りたいのだという。

ますださんがコーヒーを淹れる様子
来てくれた人が楽しい時間を過ごせるよう一杯ずつていねいに淹れるますださん

YUCCHI COFFEEで踏み出した一歩と今後の展望

ますださんが夢見るカフェ経営は「ゼンガクジコーヒー」の間借り営業的なかたちで、第一歩を踏み出したといえる。

コーヒー豆は、山梨県のコーヒースタンド「AKITO COFFEE」から取り寄せている。旅先で出合った、ますださんのお気に入りのコーヒーを出すお店だ。今後はほかのショップの豆を使ったコーヒーも提供する予定。自身がまだ見ぬコーヒーと出合いたいのと「YUCCHI COFFEE」を訪れる人に、おいしいコーヒーが日本だけでもたくさんあることを知ってもらいたいから。そして「食べることも好きなんですよ」と語るますださんは、コーヒータイムがよりハッピーになると考えるお菓子にもこだわる。とある日は麻布かりんと(麻布)の「かりんとまん」。別の日は、Afterhours(渋谷)の「かおクッキー」。焙煎度合や香りなど、その日に提供するコーヒーにぴったりのお菓子は何か、毎回頭を悩ませている。

「YUCCHI COFFEE」には、小学生から年配まで、さまざまな人が訪れる。彼女が厳選したコーヒーとお菓子のマリアージュを、みんな笑顔で楽しんでいる。話を聞くのが好きな彼女に、お客さんは色々と話しかけ、時間が緩やかに過ぎていく。「私は聞き役が多いですが、お客さんがここで楽しそうに会話しているのを見るのが好きなんです。それでその人たちの手に、自分が淹れたコーヒーがあるのってなんかいいんですよね」。

いずれは自分のお店を構えたいと思っているますださん。「でも、今のYUCCHI COFFEEが楽しすぎて、独立する気がなかなか湧かなくて困ってます……」と、笑いながら悩みを教えてくれた。

全學寺
住所
足立区古千谷本町2-22-20
ホームページ(ゼンガクジ フリー コーヒースタンド)
https://zengakujifreecoffee.com/

今回の応援者 大島俊映(全學寺 副住職)

大島俊映
大島俊映

全學寺じゅずつなぎの第3回では、「ゼンガクジ フリー コーヒースタンド」のバリスタで、同地で定期的に「YUCCHI COFFEE」をオープンする“ゆっち”こと、ますだゆりかさんを取り上げてもらいました。私たちのコーヒースタンドは何人かのバリスタにお手伝いしてもらって運営していますが、ゆっちはその中でも中心となって頑張ってくれています。この記事を読んでくれた方には、ゆっちの淹れるスペシャリティコーヒーを飲みに、全學寺まで足を運んでもらえたら嬉しいです。

文=井上良太(トネリライナーノーツ 副編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/inoue/

撮影=山本陸(トネリライナーノーツ サポーターズ)
Instagram
@ganometherapics
note
https://note.com/ganome_riku