“リスナー社員”のメールから実現した西新井大師「スカ盆」、地域とラジオが起こす熱狂の舞台裏

フリーストーリー

2024年8月17日(土)と18日(日)の2日間で開催される「第29回大師夏まつり」。2日目となる18日には、TOKYO FMの長寿番組『Skyrocket Company(スカロケ)』とのコラボで「スカロケ盆踊り(スカ盆)」が実施される。2年連続2度目となる「スカ盆」は、番組と1人の“リスナー社員”によって誕生した。ラジオ番組とそのリスナー、さらに地域が繋がるイベントはどのように生まれたのか?番組プロデューサー・柴崎優さんと、リスナーで大師夏まつり実行委員長・伊藤怜さんに話を聞いた。

『Skyrocket Company』柴崎優プロデューサー(左)、大師夏まつり実行委員長・伊藤怜さん(右)
『Skyrocket Company』柴崎優プロデューサー(左)、大師夏まつり実行委員長・伊藤怜さん(右)

リスナー社員からのメールで動き出した「スカ盆」プロジェクト

第1回目の「スカ盆」が開催されたのは、2023年夏のこと。『スカロケ』のリアルイベントとして、番組サイドが盆踊りの開催を熱望していたところ、「大師夏まつり」の実行委員だった伊藤さんが、番組とのコラボをメールで持ちかけたのがきっかけだった。

新型コロナウイルスの影響が和らいだとはいえ、当時は社会にまだ鬱屈とした雰囲気が残る中、『スカロケ』はみんなが盛り上がれるリアルイベントとして盆踊りの開催を模索。局内のイベント運営チームと連携して会場を探すものの、なかなか場所が見つけられなかったという。そんなある日、番組リスナーの伊藤さんから「一緒にイベントをしませんか?」とメールが届く。柴崎さんはその日のうちに伊藤さんに連絡を取り、「スカ盆」の開催プロジェクトが動き出した。

伊藤さんが番組へ送ったメール
伊藤さんが番組へ送ったメール
コロナ禍には、花火大会や祭りが軒並み中止になり「夏の音」が消えた。番組で祭りの太鼓や笛の音を流した際の反響を受け、「スカロケ」では夏の音を復活させるべく盆踊りイベントの開催を考えるようになった
コロナ禍には、花火大会や祭りが軒並み中止になり「夏の音」が消えた。番組で祭りの太鼓や笛の音を流した際の反響を受け、「スカロケ」では夏の音を復活させるべく盆踊りイベントの開催を考えるようになった

『スカロケ』のリスナーは「リスナー社員」と呼称される。番組を「ラジオの中の会社」と捉え、視聴者とともに番組を作り上げるのがテーマの『スカロケ』にとって、リスナーは聴き手であり社員でもあるわけだ。伊藤さんがリスナー社員になったのは、緊急事態宣言後の2020年頃。コロナ禍で仕事のスタイルが変化し、夕方には自宅で過ごすようになったことで熱心に聴き始めたという。

伊藤さんは『スカロケ』について「リスナーへの寄り添い方が異常なんですよ」と笑う。リスナー社員からはさまざまなメールが届き、時にはヘビーなお悩み相談もある。そういったメールに対しても真摯にぶつかるのが『スカロケ』であり、トークが長くなり過ぎて、聴いている伊藤さんが進行を心配になることも。

一方で、そうした番組だからこそ、コロナ禍の日々でも元気に過ごせる活力になっていたのだという。そして「この人たちと仕事がしたい」と、コラボを持ちかけた。

「パーソナリティであるマンボウやしろさんの、リスナーを大切にしている感じも番組の魅力」と語る伊藤さん。そこから、いつか一緒に何かできればと考えていたそう
「パーソナリティであるマンボウやしろさんの、リスナーを大切にしている感じも番組の魅力」と語る伊藤さん。そこから、いつか一緒に何かできればと考えていたそう

とはいえ、「スカ盆」にとって久しぶりのリアルイベント。「大師夏まつり」にとっては初のコラボということで、その実現は一筋縄ではいかなかった。

「大師夏まつり」はその名が示す通り、西新井大師(真言宗豊山派五智山遍照院総持寺)を会場としている。836年創建の由緒あるお寺であり、「大師夏まつり」についても、今回で29回目を迎える伝統あるお祭りだ。

コラボイベントとなると、伝統と挑戦の狭間で踏み込んではいけない場所・コトがたくさんある。柴崎さん曰く、既存のお祭りとラジオ番組とのコラボは「異物が混入するようなもの」だそう。リスナー社員だけでなく、以前から「大師夏まつり」に足を運ぶ人たちも楽しめるイベントにするのは当たり前。そのために、柴崎さんは伊藤さんと密に連絡を取り合い、伊藤さんは会場である西新井大師の関係者と何度も面会して調整を進めた。初めて実行委員長を務めた伊藤さんは、先輩たちから「大変だね」「普通はチャレンジするなら2回目でしょ」と発破をかけられるほどの右往左往ぶり。イベント企画を考える局と開催場所である西新井大師の間で奮闘する2人は「まるで中間管理職みたいだった」という。

過去最高、献灯700本を記録した「第28回大師夏まつり」

中間管理職2人の頑張りもあり、2023年の「スカ盆」は大盛況で幕を閉じた。伊藤さんが小学生のときからあるという「大師夏まつり」だが、「自分たちがやったというのもあるけど、1番良かったと思う」と胸を張る。コロナ禍で地域の企業や商店が元気をなくしていく中、祭りへの協賛、献灯される提灯も減少傾向に。しかし昨年は、ラジオ番組とのコラボイベントであることを追い風に、青年部員たちが協賛を募るべく各所を回り、過去最高となる約700本の献灯がなされた。

苦労の甲斐もあって、伊藤さんと柴崎さんの目に映った「スカ盆」の光景はとても美しかった。そして伊藤さんは、「スカ盆」が終わって柴崎さんから送られた「2023年8月20日、日本で1番熱い場所は西新井大師でした」という言葉を、今でもはっきり覚えている。

2023年の「大師夏まつり」の様子
2023年の「大師夏まつり」の様子
2023年の「スカ盆」の様子
2023年の「スカ盆」の様子

リスナー同士が繋がるハブとしての『スカロケ』

それにしても、柴崎さんと伊藤さんはとても仲がいい。まるで長年の友人かのように掛け合いをしながらインタビューに答えてくれる。「会ってみると同い年だと分かって仲良くなった」という2人だが、『スカロケ』という番組のコンセプトも無関係ではなさそうだ。

番組のコンセプトは、「あらゆる企画を通じて、社員=リスナーの皆さんと力を合わせ、あなた自身の“明日への狼煙を上げる”為のラジオの中の会社」。情報を一方的に届けるのではなく、番組をハブとし、リスナー社員からの応援ソングやコメントを通して、リスナー同士が繋がるような仕組みになっている。

番組制作陣とリスナーとは思えない、十年来の親友のように仲良しな柴崎さん(42歳)と伊藤さん(42歳)
番組制作陣とリスナーとは思えない、十年来の親友のように仲良しな柴崎さん(42歳)と伊藤さん(42歳)

また『スカロケ』では、これまでに50回以上のリアルイベントを開催してきた。パーソナリティも参加する飲み会や、バーベキュー大会、プロ野球応援ツアー、皇居ランなるものまでさまざまだ。そしてイベントでは、リスナー社員同士がすぐに意気投合する。X(旧Twitter)でリスナー社員が結婚記念日や誕生日を呟くと、顔も知らないであろう別のリスナー社員がお祝いコメントを送るようなこともある。

そうした「番組とリスナー」「リスナー同士」の垣根のなさは、長寿番組として多くの人から愛される一つの要因となっている。

マンボウやしろさんが本部長、浜崎美保さんが秘書となってパーソナリティを務める『スカロケ』。リスナー社員からのメールと2人の軽妙なトークを中心に番組が進行していく
マンボウやしろさんが本部長、浜崎美保さんが秘書となってパーソナリティを務める『スカロケ』。リスナー社員からのメールと2人の軽妙なトークを中心に番組が進行していく
ちなみに今回は、『スカロケ』の放送局であるTOKYO FMにおじゃましてインタビューを敢行
ちなみに今回は、『スカロケ』の放送局であるTOKYO FMにおじゃましてインタビューを敢行

安心安全な「スカ盆 2024」でみんなを笑顔に

「スカロケ大盆踊り大会 in 大師夏まつり2024」は、8月18日に開催される(「大師夏まつり」は17・18日)。13:00〜と15:00〜で西新井大師にて各1時間のファンミーティングを、17:30〜21:15で盆踊り大会を実施。オリジナルグッズの販売や、ひもくじもある。

今年の「スカ盆」について2人に聞いてみると、「安心安全というパワーアップ」を目指したという。昨年の「スカ盆」の後、伊藤さんは「今までで1番すごかった」「大師夏まつりってすごいな」といった言葉をたくさんの人からかけられた。そして2人とも、リスナー社員はもちろん地元の人たちも一体になり、「スカ盆」に笑顔が溢れた光景は忘れられないという。

「スカ盆」のフォーマットとしては、すでにたくさんの人が満足できるものになっているはず。そのため今年は、人の滞留などストレスになる要素を減らし、より誰もが楽しく、笑顔になれる「スカ盆」を目指すのがベストだと考えている。

地域とラジオ番組が作り上げる最高の大盆踊り。リスナー社員だけのためのものではないし、地域の人たちにとっては普段よりも楽しいものに。主役になるのではなく、多くの人が繋がる「ハブ」としての役割を担う『スカロケ』ならではの盆踊りが、今年もすぐそこまで迫っている。

イベント・番組概要

スカロケ大盆踊り大会 in 大師夏まつり2024 イベント概要

<開催日時>
2024年8月18日(日)17:30~21:15
参加無料
※スカロケとのコラボは19時45分~

<開催場所>
西新井大師

<出演>
マンボウやしろ、浜崎美保

<主催>
大師夏まつり2024(西新井町会青年部)

<後援>
TOKYO FM 『Skyrocket Company』

<特設サイト>
https://www.tfm.co.jp/sky/bonodori2024/

盆踊り大会で参加者が一つになって踊る「スカロケ音頭」。振り付けを覚えていくとより楽しめる

Skyrocket Company 番組概要

<放送日時>
月~木 17:00~20:00 TOKYO FM 生放送

<出演者>
マンボウやしろ、浜崎美保

<番組内容>
“ラジオの中の会社”をコンセプトに、平日夕方5時から明日を良い日にするために、リスナーとともに意見を交換する“会議”を行う番組。

<番組HP>
https://www.tfm.co.jp/sky

取材=井上良太
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/inoue/

撮影(取材時)=山本陸
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/riku/