「ちきゅうの学校」小笠原愛さん ×「studio景」茂木慧太さん ―和尚代筆 其の参―

トネリライナーノーツ編集長であり、日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩6分の全學寺副住職である大島が、地域の中にある物語を、その物語の主役たちに代わって描く連載が「和尚代筆」です。
其の参では、日暮里舎人ライナーユーザーで、自然あそび体験イベントを開催するコミュニティ「ちきゅうの学校」の生徒会長である小笠原愛さんと、西日暮里駅より徒歩7分のフィットネススタジオ「studio景」のオーナートレーナーである茂木慧太さんによる対談をお届けします。
(取材日:2020年11月15日)

「ちきゅうの学校」生徒会長の小笠原愛さん(左)と「studio景」オーナートレーナーの茂木慧太さん(右)
「ちきゅうの学校」生徒会長の小笠原愛さん(左)と「studio景」オーナートレーナーの茂木慧太さん(右)

トネリライナーノーツ連載記事の校正を通して

私が編集長を務めるトネリライナーノーツで、「ちきゅうの学校」の小笠原愛さん(以下、愛さん)は『愛の生徒手帳』を、「studio景」の茂木慧太さん(以下、茂木さん)は『もてき式コラム』を連載している。

私自身は、原稿の文章を読みやすくするだけの校正として、2人の連載に関わっているが、文章を直しながら思っていた事がある。この2人、思考が似ていると。そして、自分を含めた一般の人とは違うな、とも。

今回の対談は、2人の思考を同時に掘り下げる事によって、連載記事とはまた違った味わいの愛さんと茂木さんの物語を届けられるかもしれないと思い、私が企画した。愛さんは六本木のホステスとして、茂木さんは競泳の選手として、過去にはトップにまで上り詰め、現在は「やりたい活動をやっている」と口を揃える2人の現在地を、余す事なく伝えられたら嬉しく思う。

対談は、西日暮里のうなぎ屋で
対談は、西日暮里のうなぎ屋で

“普通にやる事”が大切(茂木さん)

――愛さんと茂木さんの共通点として、今の活動をする前に、トップになった経験がある事が言えると思います。どういう風に自分と向き合って、そこに至ったのかをまずは聞かせてください。

愛さん 私の場合、六本木のホステスをやっていた当時は、“自分自身を生きていない”状態でトップを取りました。目的は、お金しかなかったです。お金を稼ぐという一点のために、努力すると。自分が意識していた事は、日頃から関係性を深める人付き合いや、お店に来てとは絶対に言わない営業、それに、お客様とかママとかお店とかが望む事を出来るだけ叶えるようにしていましたね。それらの積み重ねです。

茂木さん 僕は六本木のクラブには行ったことがないですけど、ドラマとか漫画とかで見たり、水泳部の先輩に好きな人がいてその人に聞いたりはした事があります。凄いですね。

――そういった努力で、ホステスのトップは取れるものですか?

愛さん 努力と、運もあると思います。その時に、お店のキャストが私よりも努力していたり、お客さんをたくさん抱えている女の子が入店したりしたら、トップを取るのは難しいので。

茂木さん 競泳も同じですね。僕が望んで1番になりたいと思っても、なれない場合もあって、そこは運の要素が大きいです。例えば、インカレや全国大会で自分が出場した時に、オリンピックで金メダルを取るような奴が出場していたら勝ち目がないんですよ。僕がインカレで優勝できたのは、運がまず良かったという事と、あとは身体が大きかったり、練習できる環境で生まれ育ってきたりしたからだと思います。

――2人とも、トップになるためには運が必要、との事ですが、私と違って、前提となる努力が出来るのが素晴らしいですよね。

愛さん ある程度の努力をすれば、上には行けると思います。私の場合は、ホステスになった当初からナンバー1を目指していたわけではなくて、努力していたら「もしかしたらナンバー1になれるかも」というのが見えた時に、そこを目指し始めました。その結果、ナンバー1にはなれたんですけど、人って1回トップを取ってしまうと、今度はそれを継続しないといけないっていうプレッシャーが生まれて、その気持ちが自分を追い込んでいく事になるんです。

茂木さん よく分かります。1回トップを取ると、下に落ちるのが中々考えられなくなりますね。周りから求められる事もあるんですけど、自分の中で「1番じゃないと嫌だ」っていう気持ちが出てきてしまうんですよ。

――茂木さんは、競泳で成績が上がってきて、自分との向き合い方って変化していきましたか?

茂木さん 小、中学校の時は、試合で良い結果を全然残せなかったんですよ。練習では速くて、コーチにはもっと良い結果が出せるはずだと言われるのに。今思うと、試合前に色々と考えすぎてしまっていたんですよね。でも、ある大事な試合がキッカケになりました。その試合の前日、熱っぽくて体調が悪かったんです。その日のために1年ぐらい準備してきたのに、そんな感じになってしまったので、「もういいや」と半ばあきらめ気味に、好きなように泳ごうと思ってレースに臨みました。そうしたら、いつもよりタイムが良くて。気持ちの面で張りつめていたものをなくして、“普通にやる事”が大切だとその時に気付きました。

茂木慧太さん「studio景」にて(撮影:山本陸)
茂木慧太さん「studio景」にて(撮影:山本陸)

愛さんって「Don’t think, Feel.」になろうとしている人(茂木さん)

茂木さんは「自然に生きている」人(愛さん)

――現在の活動に話を移していきたいと思うのですが、自分との向き合い方に変化はありますか?

愛さん ホステスを辞めて、フリーランスで仕事をするようになってから、最近まで悩んでいました。ズボラな性格だし、誰かに監視されている訳でもないから自分をコントロールするのが難しいし、朝起きると「今日も1日始まっちゃったよ」みたいに思って絶望して(笑)でも、最近気付いたのは、そうやって苦しくなるのは、自分の好きじゃない事や合わない事をしていたからなんです。

茂木さん 僕の場合は、競泳を引退してから医療系の国家資格を取ろうと思って、専門学校で3年間勉強して、卒業したにも関わらず国家試験に2回落ちてしまったんです。正直、勉強して知識を覚えても、それを自分が使っているイメージが沸かなくて。それで、資格を取る必要はないと決めてから、その後に、現在の中国武術の師匠と出会ったんです。「自分が求めているものはこれだ!」と感じて、一門の内弟子にはすぐにはなれないのですが、内弟子の“候補”になりました。

愛さん 自分を大切にすることが大事ですよね。フリーランスになったばかりの頃に比べると、今は自分が心地良いと思う選択をするようにしています。そういう選択をしても、時間を経て心地良くないものに変化していったら、それは取り除いていく。それを丁寧にやっていったら、「今日はこれやりたい!あれやりたい!」に変わっていきました。

茂木さん やっていて楽しいとか、毎日やっても苦にならない事とかが、自分の好きな事なのかと思いますね。そう思うのは、実のところ、僕は水泳があまり好きではなかったからです。嫌々練習しているところがあったし、その練習も量が膨大で真面目にやると疲れちゃうし、手を抜いてタイムが遅いとコーチに怒られる。話は逸れますが、当時は、適当にやってもタイムが速いのを目指しました。面白いのが、力が抜けていてタイミングがジャストだと、適当でも速く泳げるんです。

――今2人が言ってくれた事は、それぞれが書く連載記事の文章にそのまま表れているように感じています。愛さんは不器用で、茂木くんは器用というかコツの掴み方が上手い。

茂木さん 愛さんって「Don’t think, Feel.」になろうとしている人っていう印象で、凄く良いなと思っています。「Don’t think, Feel.」は、もちろん、僕の大好きなブルースリー大先生が言った名言です(笑)

愛さん もがいているって事ですよね(笑)

茂木さん いや、もがいているって言うか、頭で考えても答えは出ないじゃないですか。でも、感じたら、答えが出るかもしれない。それをこれまでの経験で分かっている気がするし、自分の考え方にも近いなと。

愛さん 茂木さんは「自然に生きている」人だと思っています、私は。自分と似ている部分はもちろん多くて、さらに、自分よりもその「自然に生きている」時間が長い感じがしますね。

「ちきゅうの学校」生徒会長の小笠原愛さん。“生徒会長”なのは「地球が先生だから」
「ちきゅうの学校」生徒会長の小笠原愛さん。“生徒会長”なのは「地球が先生だから」

他人こそ、自然の一部(愛さん)

――お互いに似ている2人ですが、私から見た2人のスタンスの違いは、他人との関わり方かなと感じています。愛さんは「ちきゅうの学校」で色々な人と関わりながら運営している一方、茂木さんは「studio景」で1人でも稽古をしたり読書をしたりと自分と向き合っているイメージがあります。他人との向き合い方については、いかがですか?

愛さん 他人こそ、自然の一部だから。完全に流れに身を任せるだけです。それで目の前にやってきた「この人だ!」という人と仲良くなっていっている感じで、意識的に他人と繋がりたいと思って行動する事はほとんどないですね。

――面白い!イメージと違いました。他人を巻き込んだコミュニティ作りを意識している訳ではないんですね。

愛さん 意識せずに出会う中で、素敵な人だから一緒にやりたいと思ってプロジェクトが生まれたり、緩やかな輪が自然と出来たりしているイメージです。だから、他人と向き合うのではなく、「他人という自然の中で」自分と向き合っています。

茂木さん 矢印は外を向いている訳ではなくて、内を向いているんですね。僕も大人数の集まりにはあまり行きませんし、好きではないのですが、良いタイミングで良い人と出会えている感じはします。川の水の流れと同じで、逆らっても仕方がないですしね。

―― 2人とも、なぜ良い人を引き寄せられるのでしょうか。もしかしたら、冒頭にした「運」の話に通ずるものがあるかもしれませんね。

愛さん それに関連する自分の活動の話をすると、自然体験に「自分を信じる」という事を繋げたいんです。それによって、奇跡を起こせるのを伝えたいんですよね。例えば、ホエールスイムのイベントでは、海の環境などの条件が合わないと、海に入れません。また、もし海に入れて鯨がいても、鯨との呼吸が合わないと潜っていってしまうので、そうなったら見られません。だから、鯨と遭遇して泳ぐのは、奇跡的な事なんですけど、そのための運っていうのは、信じる力なのかなと思うんです。それに伴って、行動したり、祈ったりで、引き寄せられるのではないかなと。

茂木さん 自分を信じていると、良い方向に行きますよね。それが当初思っていたのとは違っても、巡り巡って良い方向に行くように思います。ホエールスイムで言えば、鯨には逢えなくてもイルカには逢えた、とか。鯨に逢えなかったとしても、信じていたのが無駄になった、のでは決してないと思います。

愛さん 私はハワイ島に行くツアーを毎年やっているんですけど、自然というか地球が色々な奇跡を見せてくれているのを感じます。

茂木さん 僕も釣りが好きなので分かります。太極拳でも、ありますよ。具体的なエピソードはすぐに思い出せないですけど(笑)

――愛さんと茂木さんは、脳みそが一緒なんですかね(笑)2人で何か一緒にイベントをやったらどうですか?

愛さん 面白そうですね!茂木さんは自然だから、楽しそう。

茂木さん 良いですね。何にも考えてないですけど、やりましょう!

▼愛の生徒手帳(小笠原愛さん)
https://tonerilinernotes.com/category/article/free/love-school/

▼もてき式コラム(茂木慧太さん)
https://tonerilinernotes.com/category/article/free/motekishiki/

対談前の2人
対談前の小笠原愛さんと茂木慧太さん

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「和尚代筆」取材者の大島俊映

文・撮影=大島俊映(「トネリライナーノーツ」編集長)
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