足立区加平で月に数回営業する「駄菓子屋 かしづき」は、地域に佇む普通の駄菓子屋でありながら、保護者が様々な子育ての悩みを聞ける場であり、また、子どもが安心して気軽に来られる場でもあります。そんな「駄菓子屋 かしづき」の店主である佐々木隆紘さんが、自身の想いや物語を綴る連載が「ほぼ月刊かしづき」です。
第3号は、「子どもの“自己肯定感“を育む大人の存在」をテーマにお届けします。
突然ですが、みなさんには恩師と呼べる人はいますか?すぐにパッと思い浮かぶという人もいれば、恩師とか分からん!という人もいるのではないでしょうか。私自身は、もちろんお世話になった方はたくさんいますが、恩師と言われると以前まではよく分かりませんでした。
しかし、今ならば、恩師を答えられます。今日はそんなお話を紹介させてください。これを読んでいただくと、みなさんにとっての恩師が分かるかもしれません。そして何より、子どもたちにとって、大人の存在がどれほど大切なのかを、改めて考え直すキッカケになるかもしれません。
健康のための能力を育む“自己肯定感”
前回の記事では健康の定義として、ポジティブヘルスの考え方「健康とは、社会的・身体的・感情的な問題に直面した時に適応し、本人主導で管理する能力」を紹介させていただきました。この考え方を知ったときに、「自分自身は果たしてどうだろう?」「あの人は健康的に感じる!」など、自分自身や周りの人を思い浮かべてみた人もいるのではないでしょうか。では、こういった能力を育むためには、なにが必要でしょうか?
いきなり結論を書くと、こうしたポジティブヘルスの考え方に基づいて健康の能力を手に入れるなら、それは「自己肯定感」を高く持つことが重要になると考えます。最近では「自己肯定感」という言葉は多くの方々が耳にしたことがあると思います。書店に行っても、「自己肯定感」に関する本も沢山並んでいますし、論文などでもその重要性は説かれています。
「自己肯定感」とは一言で表すと「自分の存在を肯定できる感情」のこと。自分には価値があり、ここに居て良いと思える感情のことです。そのため、自己肯定感の高い人は、病気になったりカラダを痛めたりしたとしても、そんな自分を受け入れて肯定し、行動を選択していくことができます。反対に、自己肯定感が低ければ、病気の自分を受け入れられずに「絶対に治さないといけない」と焦ってしまったり(治療への前向きな取り組みはとても大切です)、「もう自分は病気になってしまったから価値がない」などと思ってしまったりする人もいるのです。
私は人が健康的に生きるために、この「自己肯定感」が非常に重要だと考えています。では、この「自己肯定感」は、高めようと思って高められるでしょうか? 特に、子どもの「自己肯定感」はどのように高められるでしょうか?
私の「自己肯定感」を育んでくれた“恩師”の存在
ここからは、私自身の話を紹介させてください。
私は幼少期から身体が小さく、引っ込み思案で何事にも自信の持てない子どもでした。2歳上の姉がいるのですが、姉は背が高くて力も強く、ケンカをしてもいつもコテンパンにやられていました。運動神経も姉の方が良くて、絵を描くのも、歌を歌うのも、姉の方が上手でした。そんな姉を近くで見ていて、私は常に劣等感を抱いていました。
引っ込み思案の私を心配した母に、スポーツを勧められて、私は小学校3年生からバスケットボールを始めました(バスケを選んだ理由は、怪我が少なそうだからという・・・)そんな外発的な動機で始めてみたものの、最初の頃は練習にも真面目に行かず、友達と遊んでばかり。5年生になってから真面目に練習に通うようになりましたが、相変わらず引っ込み思案で自分に自信が持てず、ボールを持ってもシュートを狙わず、すぐに仲間へパスするような選手でした。
そんな私に、常にポジティブな声かけをしてくれるコーチがいました。それが私の恩師である吉川コーチです。当時、チームにコーチは4名いたのですが、その中でも吉川コーチは「お前は外のシュートが上手いから打て!」「シュートが入るんだから、俺が敵チームだったらお前は恐い存在だ!」と、いつも褒めて励ましてくれました。反対にシュートを打たずに逃げると「なんで打たないんだ!」と怒られました。
この頃から、私は自分の外からのシュートに対して自信を持てるようになりました。「自分はシューターだ」という自覚も芽生えます。
当時は深く考えていませんでしたが、今振り返ると、これはチーム内での役割であり、存在意義です。自信を持てなかった私の中に芽生えた、「自分はここに居ていいんだ」という「自己肯定感」なのです。
それからは、バスケも一層楽しくなり、自主練習にも精を出すようになりました。努力すれば上手くなれると信じることができたのです。これは専門的には、「自己効力感」と呼ばれるものです。
「自己効力感」は、自分はそれを遂行することができるという確信の感覚であり、その基盤となるのは「自己肯定感」です。私は吉川コーチから褒めてもらい、自分の役割を自覚できたことで、「自己肯定感」が高まりました。
その結果、バスケを楽しむことができ、未来に希望を持てるようになり自ら進んで努力することができるようになりました。1人のコーチの声かけや私への向き合い方が、私の心を大きく成長させてくれたと思います。
子どもにとってこのような「自分を見てくれている」という大人の存在が非常に重要で、これは世界中の研究からも分かっていることです。
みなさんも自身のお子さんはもちろん、近所の子どもなど関わる子どもたちへの「何気ない一言」に秘められたパワーを信じて、地域で子どもを育てる一つの役割を担っていると思います。そして、私もその役割を担っている自覚を持って、駄菓子屋という場所を通して地域の子どもたちと関わって行きたいと考えています。
駄菓子屋 かしづき
住所
東京都足立区加平1-12-3
ホームページ
http://dagashiya-kashizuki.com/
Instagram
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文=佐々木隆紘(トネリライナーノーツ サポーターズ)
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