心の処方箋 【もてき式コラム #2】

もてき式コラム

日暮里舎人ライナー「西日暮里駅」より徒歩7分にあるフィットネススタジオ「studio景」のオーナートレーナーである、茂木慧太さん。競泳でインカレ優勝やロンドンオリンピック最終選考進出などの実績を残し、現在は太極拳の道を邁進するそんな彼が、その時のインスピレーションで書きたいことを書くのが「もてき式コラム」です。

#2では、「心の処方箋」をテーマに、コラムを寄稿してくれました。

茂木慧太さんによるワークショップの様子
茂木慧太さんによるワークショップの様子

こんにちは。トネリライナーノーツで連載させて頂いている、西日暮里にある「studio景」の茂木慧太(もてきけいた)と申します。

世間では依然として新型コロナウイルスが猛威を振るい、気の休まらない夏になってしまいました。長きに渡るコロナ自粛のストレスでおかしくなってしまった人たちがマスクなしで集会を開いたり、咳エチケットが原因で電車内の乗客同士が喧嘩をしたり、様々なところに軋轢が出てきているように感じます。

僕はというと、先月末に第一子が誕生して、家族が増えた喜びに包まれながら生活を送っているのですが、新型コロナウイルスの恐怖はやはり拭いきれません。それでも、僕は性格的におっとりしているせいか、思い詰めたりする事が少ないので、(小中学生の頃は思い詰めてしまう事が本当に沢山あったのですが、その時に一生分思い詰めたようです)妻からも「あなたと一緒にいると必要以上に不安にならずに済む」と言ってもらえます。

心の中の問題について

そんな僕には、人が多いところに行くと、ついつい人を観察してしまう癖があります。今回のコロナ騒動の最中も、たくさんの人を観察しました。

人間というのは面白いもので、自分自身では不安に思っていたりストレスを感じていたりという内面の情報(心の中の問題)が、外には出ていないと思っています。けれども、よくよく観察すると、ふとした瞬間に、心の中の問題が外に出てきている人が多くいます。眉間にシワが寄ったり、人差し指を小刻みに動かして足をトントン叩いたり、目の奥に焦りが見えたり、肩まわりを始めとする上半身に何か重いものが乗っかっているような感じがあったり。

日本人は心の中の問題を隠すのが比較的得意な民族だと思うのですが、それでも長い時間それを内側だけに留めておく事は難しく、何かの拍子に表に出てきます。しかし、 心の中の問題 が表に出てきてしまうのは、決して悪い事ではありません。むしろ不安やストレスが表に出ないように内側だけに隠し続けるせいで、より深刻に心から身体を蝕んでしまうケースもあります。

そのため、信頼できる人の前で心の中の問題を出したり、大自然の中や周りに誰も人のいない所に行って思いっきりそれを吐き出したりする事も大事だと思います。

心の使い方が身体の動きを変える

僕の仕事は多くの人に運動を始めとする「身体の動かし方」をお伝えする事です。けれども、この頃は「身体の動かし方」だけを伝えていたのでは限界がある様に感じてきました。「身体の動かし方」ともう一つ「心の使い方」も伝えていかなければ本当に動きを良くしたり身体を良くしたりする事はできないと思うようになってきたのです。

ボールを投げるという動きで例を挙げます。
①あなたの「手」だけがボールを投げるのか?
②あなたの「手」と「肩」と「腰」だけがボールを投げるのか?
③あなたの「手」と「肩」と「腰」と「足」だけがボールを投げるのか?
④それら全ての「身体」とあなたの「心」も本気で「ボールを遠くに飛ばしたい!!」と強く思いながらボールを投げるのか?
①〜④では、考えるまでもなく、結果が違う事が想像できると思います。④のように心が本気になった時にこそ、身体は最高のパフォーマンスを発揮できます。

僕は子どもに水泳を指導することもありますが、子どもの習い事では「これをやって何になるの?」とか「親や先生、コーチがやれと言うからやっている」とかを子どもに思わせてしまったらいけません。彼ら彼女らの心が本気になれないかったら、結果として、身体はそのパフォーマンスを眠らせたままにしてしまいます。心から本気でやっている子どもとそうでない子どもの結果に歴然たる違い生じるのは、こういった「心の使い方」の指導に理由があると思います。

心のために、集中する

心には、何かに集中している時に不安やストレスを感じない、という興味深い面もあります。不安になりやすい人やストレスを感じやすい人は、何か心から一生懸命になれる事に打ち込むと、不安やストレスを感じる時間を少なくする事ができます。心は、キャパシティがわりと狭くできているのです。

何かを始めるのでしたら、趣味としてのスポーツはオススメです。私のスタジオに来る方もそうですが、仮に嫌な事があってストレスを感じていても、グローブをはめて「サンドバッグを力強く叩いてやろう!」と集中すると、心はキャパシティが狭いために、さっきまでの嫌な事をすっかり忘れてしまいます。心に考える隙間を与えさせないように集中して身体を動かすと、とても気持ちの良い時間を過ごす事ができます。

また、自分が得意だったりチャレンジしてみたかったりするスポーツをやる以外でも、朝か夕方に散歩をするのもオススメできます。散歩する場所は、市街地よりも自然のある公園や川、海辺などがベストです。そう言った自然の風景は朝や夕方が特に変化に富んでいます。綺麗な朝焼けや夕焼けを見ていると、嫌な事を考えている時間が徐々に少なくなり、気分転換が図れると思います。

スポーツや散歩をして清々しい気分になった所で、思い悩んでいた問題の事をもう1度考えてみましょう。すると、案外良い答えがポロっと出たり、自分が頑なになり過ぎていた事に気付けたり、今すぐに解決する必要がない事に気付いたり、相談すべき相手を思い付いたり、何かしらの進展が得られる事もあります。

集中とは、「心を集める」ことです。新型コロナウイルスのせいでストレスや不安が多いこの時期ですが、何かに集中する事で、イライラや不安な気持ちに囚われる時間を減らして健やかに乗り切りましょう!

studio景
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東京都荒川区西日暮里1-61-4
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「もてき式コラム」執筆者の茂木慧太
「もてき式コラム」執筆者の茂木慧太

文=茂木慧太(「トネリライナーノーツ」サポーターズ)
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