「トネリライナーノーツ」編集長である大島俊映が、地域コミュニティへの想いや地域活動の裏側を描く連載が「編集長は話が長く、書くのが遅い」です。
第4話では、「『ガチアダチ』取材をスタート、“コツアダチ”の幕開け!」をテーマに、遅々と進まない筆でお届けします。本当は飲み会で聞いてほしいです。
『ガチアダチ』特設ページ
https://tonerilinernotes.com/gachi-adachi/
パーマをかけて“コツアダチ”へ
上手くいかないことだらけだった前回の記事から、約1ヶ月。その間に、私は約8年ぶりとなるパーマをかけた。
ただ髪型を変えただけと言うことなかれ、『ガチアダチ』の「予算はどうしよう」とか「取材はどうしよう」とか前に進まずに考え過ぎていた頭が、スッキリ軽くなったのは事実。
とにかく、今はこのチャレンジのことを関係者や周りの人たちに伝えて、コツコツ進めていくしかない。そう、予算だって、取材だって、コツコツ積み重ねていくしかないのだ。“コツアダチ”である。
そんなわけで、前回の記事で書いた進捗の続きを。
パーマをかける前に、足立区のシティプロモーション課に『ガチアダチ』のプロジェクトのことをお伝えしてきた。私の話を熱心に聞いてくれて、後押しは惜しまないと伝えられて、応援で返したくなる。タイミングを計って、シティプロ課の方の取材記事も作るかも。足立区の後援もいずれ申請する予定だ。
「トネリライナーノーツ」のビジュアルを担当したデザインチーム「想造楽工」との打ち合わせは、先方の都合で延期になってしまった。けれど、電話とメッセージで連絡は取り合っていて、来月には面白いニュースを届けられるかもしれない。
そして、前回の記事で書いた通り、『ガチアダチ』を一緒に作ってくれる地域の人たちへの取材を兼ねた音声コンテンツ「ガチアダチ ラジオ」をスタートさせた。
足立区で1番“エモい”丸山さんと2時間超えの真剣勝負
2月某日、私たち「トネリライナーノーツ」編集部は、足立区江北にある印刷会社「安心堂」にいた。目的はもちろん、代表取締役の丸山有子さんに会うためで、アポは2時間ほど。
「ガチアダチ ラジオ」の初めての収録の他、『ガチアダチ』の企画説明、もろもろの撮影、そして、次回には伝えられるであろう“ある打ち合わせ”があって、この2時間のために万全の準備で臨んだ。
とにかくエモい丸山さん
ところで、丸山さんは良い意味で本当に、“エモい”。会って話す時の語り口やSNSの文章は、相手の心をストレートに打つ。それに、彼女のチャレンジもまた、“エモい”。
靴磨きトラベラーの佐原総将さんによる「靴磨き世界一周 報告会全国ツアー in東京」は丸山さんが主催していて、会場となる足立区千住の「天空劇場」のキャパは400名である。普通で考えたら、一般の人が満員にできる数はないけれど、丸山さんは「総将くんの旅の物語が、誰かの勇気や元気になるかもしれない」と信じているから、難しい道を前に進み続けている。「イベントの参加チケットサイト」の丸山さんの文章は“エモエモ”なので、ぜひ読んでみてほしい。
イベントの参加チケットサイト
https://marumarutk.base.shop/
佐原総将さん×丸山有子さんの記事
https://tonerilinernotes.com/norikae005/
応援が循環する地域、とは?
話を戻そう。まずは、丸山さんに『ガチアダチ』プロジェクトのことを伝えていく。「トネリライナーノーツ」のこと、『ガチアダチ』プロジェクトへの想いや背景、具体的なお金やスケジュールの話。
私の話のあと、丸山さんからは「なんで、ガチアダチをやるの?」「ガチアダチをやると、地域はどうなるの?」といったプロジェクトの核になる部分への質問が出た。自分事として聞いてくれるのが分かって嬉しくなる。
ただ、その場で上手く言語化できた自信がないので、それらの問いに対する回答をここにもう1度書いてみようと思う。
これまでにも書いてきたけれど、『ガチアダチ』プロジェクトにチャレンジする背景をザックリと一言で。
「少子高齢化が進む日本における地域という文脈では、“お金の循環が減っていく”のは分かっているから、“応援の循環を増やす”方が心豊かに生きていけるよね?」という問いがあって、それだったら「トネリライナーノーツは、地域の人たちに“たくさん応援してもらわないと成功できない”ような大きなチャレンジ(『ガチアダチ』プロジェクト)をやろう!」という答えがある。
この説明をする時に最も難しいのが、“お金”は実体があるし数字で価値を計れるけれど、“応援”には実体がないし数字で価値を計れないこと。だから、『ガチアダチ』プロジェクトの説明をした時に、私たちトネリライナーノーツが目指す“応援が循環する地域”のイメージがしづらいのかもしれない。
では、実体もないし数字で価値も計れない“応援”の正体とは?ズバリ書くと、私たちは「応援=ポジティブなコミュニケーション」だと定義している。コミュニケーションは、確かに実態もなく数字で価値も計れないけれど、1対1・1対N・N対Nなどで「人と人を繋ぐ」というのは理解できるだろう。つまり、“ポジティブなコミュニケーション(応援)”が生みだすものは、“人と人のポジティブな繋がりだ。
「応援が循環する地域」とは、地域の人たちが“ポジティブなコミュニケーション(応援)”をたくさん重ねることによって、人と人の繋がりの集合体である社会(地域)もポジティブになっていくという世界観である。
「応援が循環する地域」の逆で考えると、イメージしやすいかもしれない。「応援」の反対語は、コミュニケーションが“ない”という「無関心」と、“ネガティブ”なコミュニケーションとなる「ブーイング」や「悪口・陰口」などだ。例えば、“お金だけ”を評価指標としているせいで「あいつに石を投げろ!」と号令をかける写真週刊誌や、それを中心とした“悪口は、悪口を呼ぶ”という「ワイドショー的な日本」は、私たちが目指す「応援が循環する地域」というビジョンと対極にある。
取材の難しさを痛感
丸山さんに今回のプロジェクトのことを伝えた後は、いよいよメインとなる「ガチアダチ ラジオ」の収録(『ガチアダチ』の取材)に臨んだ。
今回、『ガチアダチ』の雑誌用の取材を、音声コンテンツ「ガチアダチ ラジオ」としてYouTubeやPodcastにアップしていくことにしたのには、いくつかの理由がある。時間的な制約を解決するためだったり、プロジェクトへの信用を積み重ねるためだったり、私たちの想いを応援してもらうためだったり。
それらと共に、雑誌用の取材を「ガチアダチ ラジオ」にした大きな理由の1つが、このプロジェクトを進めていく中で『ガチアダチ』を一緒に作る地域の人たちの生の声を届けたいという気持ちが生まれたから。この音声コンテンツによって、これまでの記事では伝えられなかった地域で活動する人の温度感を、聴いてくれる人たちに届けられるだろう。
「ガチアダチ ラジオ」の構成は、前編と後編に別けて、前編では取材をする相手の仕事や活動の紹介を、後編では『ガチアダチ』の取材を兼ねて地域をテーマに話を聞いていくことに決めた。と、ここまでは、良かったのだが。
後編の収録が始まって、すぐに気付く。“音声コンテンツ”と“雑誌用のテキスト”の取材を両方とも同時にやるの、めっちゃムズい。
雑誌用のテキストは自分たちではなく、音声データをもとに編集プロダクションが編集して誌面に落とし込むので、「見出し」や「本文でのスポットが当たる箇所」や「テキストになった時の取れ高」を想像しながら話さないといけない。かと言って、それらを気にしすぎると、今度は音声コンテンツの方がおざなりになってしまう。
正直なところ、丸山さんとは何度も飲みに行ったことがあるぐらい仲が良いし、彼女自身も話の行間が読める人だから、今回は上手く収録できたと思う。けれど、この後に「100名に近い様々な人たちを、このスタイルで取材するのは大丈夫だろうか」と不安になった。
「ガチアダチ ラジオ」丸山さんの回
https://tonerilinernotes.com/gachi-adachi-radio001/
上手くプロジェクトを伝えられなかったり、取材のやり方が難しかったりと課題はあった。ただ、12月に『ガチアダチ』への挑戦を始めて以来、これまではヨチヨチ歩きだったプロジェクトの歩みが、丸山さんとの真剣勝負を経て一気に加速したように思う。この長いプロジェクトをもし完走できる日が来るとしたら、走り始められたのはこの日だったと言うだろう。“コツアダチ”の幕開けの日だ。
この取材のあとに行った丸山さんとの“ある打ち合わせ”の詳報は、次回に。ハイボールを飲んで、待っていてね。
文=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/