日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩圏内、東伊興の寺町の一角で、ママとベビー・キッズの「コミュニティKoen」代表の山本亜紀子さんが「ママとキッズのサードプレイス」という親子の居場所作りにチャレンジしています。そのプロジェクトが進む中、新たな物語が産声を上げました。物語の名は、“にぎりむすび”。
この連載は、トネリライナーノーツ編集長で、「ママとキッズのサードプレイス」プロジェクトにも関わる大島俊映が、「にぎりむすび」の開店までの物語を現在進行形でお届けするドキュメント「ギリギリにぎりむすび」です。5口目は「大ピンチ!“海苔の厚さ一枚”」をお届けします。
ピンチが1つと、大ピンチが1つ
にぎりむすびで、「いなり」が商品化される。まだ「しゃけ」も「うめぼし」も「こんぶ」も発表されていないのに。詳しくは、新型コロナウイルスへの手紙のていで執筆した、前回の4口目を読んで、察してほしい。
あれから、新型コロナウイルスの感染者数が急増して、現在は緊急事態宣言が発令中、僕の手紙はウイルスにも無視される事が分かった大島です。ウイルスにも、と書いたのは、学生時代に好きな女の子が出来ると、その度に書いてきた渾身のラブレターが、ことごとく無視された歴史に起因している。
今ならば、分かる。好きじゃない男の子から貰うラブレターほど、女の子にとって憂鬱を呼ぶものはない。せめて、ポップな便せんではなくて、千円札に書いて渡せば良かった。「あの千円で、おにぎりを買ったよ♪」と伝えてくれたら、僕の恋心もすぐに成仏できただろう。いや、そのおにぎりがしゃけだったら諦めきれないか。おかかだったら、千年の恋も冷める。
“しゃけさん”と呼ばれるのは免れたいので、話を戻そう。新型コロナウイルス大流行のせいで、魚卵姉妹でお馴染みの2人、にぎりむすび女将の山本亜紀子さん(以下、すじこさん)と営業担当の川野礼さん(以下、たらこさん)とは、1ヶ月近く会えていなかった。昨年は3日に1度のペースで会っていた、商品開発担当の長村孝則さん(以下、おさ)とも。「会えていない」=「ギリギリにぎりむすびを書くネタがない」と思ってもらっていい。
そう、ギリギリにぎりむすびは、ピンチの真っ只中だ。締切りがあと数時間に迫っている。YouTubeで映画『えんとつ町のプペル』関連の動画を見ている場合ではない。そして、にぎりむすびの方は、首の皮一枚ならぬ、“海苔の厚さ一枚”だけ繋がっている。大ピンチだ。
小学校の算数とおにぎり屋
ここで話は大幅に脱線するが、なんとかついてきてほしい。昨年、おさと共に小学校5、6年生時の担任の先生と25年ぶりに再会した。その時に、恩師から「お前は勉強が出来てイヤな奴だったな」と笑われた。確かに、昔を振り返ると、小学校での算数のテストは5分ぐらいで終わらせて、残りの時間は寝ていた記憶がある。全くの余談だが、同じクラスの好きな女の子に勉強を教えてあげるのは、至福の時間だった。
これは、自慢話でも何でもない。結局、その子にはフラれたし。ここでは、1つ言わせてほしいのだ。僕は最初から勉強が出来たわけではない。ただ、中学入試に向けて、毎日のように算数の問題を解き続けていた。当時は、朝起きたら、誰に言われる事もなく、計算ドリルを解くのが日課だった。やっていれば出来るようになる、それが小学校の算数だ。
“海苔の厚さ一枚”の話に戻そう。昨年12月に開催された「にぎりむすび練習会」は3回目。にぎり娘たちが、出汁を引いたり米を研いだりするのを、未だにおさに頼りながらやっている姿を見て、率直に言ってガッカリした。おにぎり屋をやるのに、おにぎりや味噌汁を作る練習を家でしていないのが分かったから。出汁の引き方や米の研ぎ方などをメモして、それを初参加の人たちに共有していないから。
僕たちは、やると決めたはずだ、おにぎり屋を。安全・安心の美味しい料理を作って、お客さんに届ける。出汁を引くのも米を研ぐのも、おにぎりを握るのだって、小学校の算数と同じ。やれば出来るようになるし、やらなかったら出来ないまま。おにぎり屋をやるのに、料理の練習をしていないなんて。「これは、大ピンチだ!」という、ここに今書いた趣旨の事をメンバーに伝えたら、お通夜みたいな雰囲気になった。今年初めてのミーティングでの冒頭の一幕である。
ただ、大ピンチだとは思うけれど、“海苔の厚さ一枚”だけ繋がっているとも思っているよ、逆に言えば。僕はテレビ東京の『ASAYAN』世代だったから、にぎり娘が「モーニング娘。」のように成長していくのを願っているし、読者の方にもお店がオープンしたら遊びに来てもらって、料理の味の感想を伝えてほしいと思う。もし美味しかったら、この記事を思い出して、にぎり娘に賞賛を。
盤石のデザインチームとロゴ
さて、当時は「モーニング娘。」よりも鈴木亜美のファンだった僕は、にぎりむすびの料理を作らない。しかし、このプロジェクトでの役割はある。僕の正式な肩書きは、事業プランナーに決まった。にぎりむすびの事業全般を動かすから、こんな原稿に手こずっている訳にはいかないのだ。
手始めに、魚卵姉妹やおさと会えていない期間に、にぎりむすびのロゴを作ってもらった。制作してくれたのは、障害のある人々をイラストレーターとして迎え協働するデザインチーム「想造楽工(注1)」をはじめとして、数々のプロジェクトを手掛けるアーティストのYORIKOさん。南三陸への復興支援活動をキッカケにご縁をもらって、今回はにぎりむすびのビジュアル面のデザイン全てをお願いした。
上のにぎりむすびのロゴを改めて見てほしい。
①「ぎ」の濁点が白ゴマ、「び」の濁点が黒ゴマ、「む」の赤い点は梅干しだ。
②ローマ字の「NIGIRI MUSUBI」と「蝶々結び」はお皿で、グローバルな現代社会を土台にしながらも、人と人が繋がる大切さを示している。
③「にぎりむすび」の文字を囲う力強い「おにぎりの形の円」は、おにぎりのシルエットはもちろん、地域の人たちの繋がりの輪も表現している。
おにぎり屋というローカルなサービスを通して、地域社会に貢献していくというビジョンを掲げたロゴだ。なお、YORIKOさんから説明があったのは①のみで、②と③は僕が深読みした事を付け加えておく。
また、にぎりむすびのデザインチームは、YORIKOさんだけではない。「大正大学に入って良かったのは、大島さんとYORIKOさんに出会えた事です」と言ってくれる「舎人線寫眞(注2)」でお馴染みのカメラマンである山本陸さん(以下、りくくん) には、撮影全般をお願いしている。 他のところで、僕の名前が省かれて「YORIKOさんだけです!」と言われていない事を願おう。
ホームページの制作も含めて、デザインチームはこれ以上ない盤石の体制を敷けた。正直、事業プランナーとしての仕事の半分は終わったのではないだろうか。後は、YORIKOさんやりくくんに実力を発揮してもらうために、僕が余計な事を言わないように意識しつつ、「いなり」と並んで「しゃけ」の商品化が決まるのを祈っていよう。にぎり娘の握る「しゃけ」を食べるのが楽しみだ。
▼にぎりむすび関連イベント
にぎりむすび商品開発会議
未定
にぎりむすび交流会
未定
にぎりむすび
ホームページ
準備中
Instagram
準備中
Twitter(ギリギリにぎりむすび)
https://twitter.com/nigirimusubi
文=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
Instagram
https://www.instagram.com/oshima_toshiaki/
Twitter
https://twitter.com/oshima_toshiaki
note
https://note.com/oshima_toshiaki
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/