「トネリライナーノーツ」編集長である大島俊映が、地域コミュニティへの想いや地域活動の裏側を描く連載が「編集長は話が長く、書くのが遅い」です。
第3話では、「『ガチアダチ』発表から1ヶ月、道なき道を探れ!」をテーマに、遅々と進まない筆でお届けします。本当は飲み会で聞いてほしいです。
『ガチアダチ』特設ページ
https://tonerilinernotes.com/gachi-adachi/
チャレンジ発表後の“想定外”
正月が終わりましたね、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。私は12月1日に『ガチアダチ』のチャレンジを発表してから、『ガチアダチ』に関する様々なことに、ガチガチに頭を悩ませてきた。
チャレンジ発表の3日前ぐらいまでは、楽しかったんだけどね。いざ始める直前になると「本当にこんな大きなチャレンジをしちゃって大丈夫かな」と不安になり、実際に始めてみるとすぐに「このままだと全然ダメじゃん」と気付くわけ。
そんな“チャレンジあるある”を絶賛経験中だけど、想定外だったことを書き出してみよう。
“そもそも予算が思っていた金額の約2倍”問題
頭の中が“どんぶり”でできている私は、雑誌の商業出版にかかる予算を“勘定”したところ300万円ぐらいかなと思っていた、なんとなく。
そんな中、チャレンジ発表後に今回の雑誌制作でパートナーとなる編集プロダクション「伊勢出版」代表の伊勢さんと打ち合わせをしたところ、私が実現したい雑誌のクオリティと制作方法を考えると、概算で以下の金額を伝えられた。
※正式な見積もりではなく、あくまで概算ね。
- 編集・デザイン・制作費 260万円
(撮影費と誌面広告の制作費は含まず) - 印刷費 100万円
- 出版事業手元金 50万円
- 芸能人のブッキング費用 100万円+α
(100万円は最低ライン)
合計で510万円+α。しかも、この概算に撮影費やら誌面広告の制作費やら乗っかってくるわけ。さらに、ここには雑誌を売るための販促費が入ってないわけ。ウケる。
“取材依頼の返信を気にしちゃう”問題
『ガチアダチ』は「地域の100人以上と一緒に作る雑誌」なので、チャレンジ発表の前後にやったことは、トネリライナーノーツの「舎人線寫眞」の記事でこれまでに繋がってきた人たち(現時点では会ったことがある方限定で、昔からの知り合いの順)に、取材依頼のメッセージをスマホから次々と送ることだった。ずっとスマホをいじっていると、まずは首がガチガチになり、次に目がシパシパして、さらに乾燥で元々荒れていた指のささくれがキリキリ痛む。
ただ、身体が痛くなるのは想定内。想定外だったのは、気持ちの方。100人以上にメッセージを送っている以上、その反応が十人十色なのを頭では理解しているけれど、「なぜ返信がないんだろう」とか「なぜ取材を断られてしまったんだろう」とか、少数の人のことをどうしてもクヨクヨと気にしてしまった。
それに、もし制作費の予算が集められなかったら、今度は取材に協力してくれる人たち全員に「すいません、雑誌を作るチャレンジは失敗しました」とメッセージをしないといけないのか、とイヤでも考えてしまう。ヘコむ。
“メンターのアドバイスが心にぶっ刺さり”問題
みなさんには、メンター(背中を見せてくれる師匠)がいますか?私にはいます。大学の2つ上の先輩で、現在は私が副住職をしている寺院や「トネリライナーノーツ」の母体となる一般社団法人の顧問弁護士をしてくれている「漣法律事務所」の近藤陽介さんだ。
漣法律事務所
https://www.sazanami-law.com/
近藤さんには私が大きなチャレンジをする度に相談させてもらっていて、今回も『ガチアダチ』のチャレンジの発表直後に相談した。結果、様々なアドバイスが心にぶっ刺さった。
1つだけ紹介すると、「“地域の文脈において必要なのは「お金」に代わる新しい評価指標で、「トネリライナーノーツ」はそれを「応援」に定めました”って資料に書いてあるけど、これは「お金」を支払ってもらう誌面広告の営業先に伝えるのって矛盾してない?」
ぐうの音も出ない、っていう想定外はこういうことを言う。ただ、近藤さんに相談したおかげで、“進もうとしていた道をたぶん間違えていた”ということは分った。だから、あえて言わせてもらおう。ぐう。
“上手くいくと保証された道”は、このチャレンジにはない
『ガチアダチ』を作る予算が想像の約2倍も必要なのを知って、取材依頼を承諾してくれた人が96名に達して、“進もうとしていた道をたぶん間違えていた”ことが分かった、チャレンジの発表からの1ヶ月。このタイミングで、道しるべのような文章を見つけたから紹介しよう。
「行き過ぎた資本主義」などと言われますが、生きづらさを抱えたり、しんどい思いをしている人たちがいます。環境問題や戦争など、持続可能ではないことがいろいろ起きていますが、その半面、資本主義には強さがあり、簡単には否定できません。であれば、資本主義というレイヤーの上に新しいレイヤーをどう作っていくかが重要になります。個人個人が小さな経済圏をつくり、お互いに重なり合って、支え合うコミュニティを作る。そういう世界観を描いています。
Web3はコミュニティのためにある。資本主義の上に新しいレイヤーを作り出す──CAMPFIRE代表取締役 家入一真氏
上記の文章は、国内最大級のクラウドファンディングサイトを運営する「CAMPFIRE」代表取締役の家入一真さんへの取材記事から抜粋した。ガチガチの首がもげそうになるほど頷いて、そして、自らが立てていた問いを再設定する。
地域の文脈に必要なのは、「お金」に代わる新しい評価指標を作ることではなく、「お金」だけを評価指標にしないために「応援」の循環を増やすことなのではないか、と。
前提となる問いが変われば、歩む道も変わる。1ヶ月前は、年明けすぐに誌面広告の営業をすることを想定していたけれど、メンターの近藤さんと話したり家入さんの記事を読んだりして、事前に立てていたスケジュールをアップデートすることにした。
では、具体的になにをするのか?このチャレンジに関わる人たちの1人1人に、自分の想いを伝えに行こうと思う。この記事がアップされる時点で、足立区のシティプロモーション課とは打ち合わせ済み、トネリライナーノーツのビジュアルを担当したデザインチーム「想造楽工」にも近日中に会いに行くことが決まっている。
また、『ガチアダチ』を一緒に作ってくれる地域の人たちへの取材も始めていく。これは音声コンテンツとして、「トネリライナーノーツ」でアップしていく予定だ。
この道であっているのかは、正直分からない。でも、とにかく進んでみるから、もし上手くいかなかったらハイボールで慰めてね。
文=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/