自らの想いを形にしたカフェを開業へ「カフェノトリコ」長村孝則さん 【和尚代筆 其の六】

和尚代筆

トネリライナーノーツ編集長であり、日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩6分にある寺院「全學寺」副住職である大島俊映が、地域の中にある物語を、その物語の主役たちに代わって描く連載が「和尚代筆」です。

其の六では、足立区東伊興にある飲食店「O・S・A」店主で、足立区内を中心としたマルシェに出店するベーグル屋「カフェノトリコ」代表も務める長村孝則さんの物語をお届けします。
(取材日:2023年4月7日)

足立区入谷にカフェダイニング「カフェノトリコ」をオープンする代表の長村孝則さん
足立区入谷にカフェダイニング「カフェノトリコ」をオープンする代表の長村孝則さん

なお、「カフェノトリコ」は2023年5月に足立区入谷にてカフェダイニング業態の新店舗をオープンするのに伴い、クラウドファンディングを実施します。

「カフェノトリコ」のクラウドファンディングページ

同級生“おさ”の一世一代のチャレンジ

東日本大震災の復興支援のために南三陸を訪れた際の写真。右から長村孝則さん、大島、大島の家族
東日本大震災の復興支援のために南三陸を訪れた際の写真。右から、おさ、大島、大島の家族

私が卒業した足立区立古千谷小学校の同級生の長村孝則こと“おさ”が、大きなチャレンジをすると言う。それは、足立区舎人地域では珍しい、というか聞いたことがない「ベーグルを提供するカフェダイニングのお店を始める」と。

おさとは今も昔も遊ぶ友人だが、地域の活動でも足立区古千谷本町のコーヒーコミュニティ「ゼンガクジ フリー コーヒー」や、「全學寺」で開催された南三陸の復興支援イベント「すきだっちゃ南三陸」、足立区東伊興にあるおにぎり屋「にぎりむすび」などで、多くの時間を共有していきた。

おさも私も、今年度で40歳。自らの夢のために、そして、地域のために一世一代のチャレンジをする彼の物語をお届けしよう。

「モーニングをやっているカフェ」を作りたい

取材は工事中の店内で行われた
取材は工事中の店内で行われた

――まずは、なぜベーグルを出すカフェをやろうと思ったの?

おさ もともとカフェはやりたいと思っていて。背景的には、両親が東海地方の出身だからモーニングに行く文化があって、モーニングをやっているカフェをやりたいと思っていたんだよね。この地域(足立区入谷・古千谷・舎人)に、モーニングとして朝からコーヒーが飲めたり食事ができたりするお店がなかったから「お店がないなら、自分で作ってしまえば良いかな」と。

それで、モーニングをやっているカフェをやるにあたって、どんなメニューが良いかを考えてみた時に、自分の母親がパン作りをしていたからパンが良いかなとは自然に思ったんだけど、そこで普通のパンだと面白くないから、べーグルにしようと思って。自分がベーグルを好きなのもあるし、汎用性が高いからサンドイッチにもできるし、腹持ちが良くて食事にもデザートにもなるし。「ベーグル、良いな!」と思って決めたんだよね。

「カフェノトリコ」のメインメニューとなるベーグル
「カフェノトリコ」のメインメニューとなるベーグル(画像提供:カフェノトリコ)

――なるほど。

おさ その流れで、小松菜農家の同級生がいるんだけど、彼との縁で足立区で生産された小松菜に「あだち菜」というブランドがある事を知って。「あだち菜」をベーグルとミックスさせたらオリジナルな商品ができるんじゃないかと思ったんだ。「モーニング×ベーグル×あだち菜をかけ合わせたカフェ」を作ろうと思いついたのが、「カフェノトリコ」の店舗をオープンしようと考えたキッカケになったね。

――おさ自身にとって、モーニングってどういう位置付けなの?

おさ 今は忙しくてあまり朝食を食べられていないけど、モーニングに行くときは休日が多くて、リラックスや息抜きになっているかな。朝1番でコーヒーを飲んでパンを食べるのは、自分の中をリセットというか、気分転換ができる時間だね。モーニングのメニューでは、コーヒーとフレンチトーストのセットが好き。自分が好きだから、「カフェノトリコ」でもフレンチトーストをやるつもりだよ。

ベーグルへのこだわりと最強の調理器具

取材時の様子
取材時の様子

――店舗がオープン前の今は、「カフェノトリコ」っていう屋号で足立区内を中心にマルシェに出ているけど、ベーグルを食べてくれたお客さんたちの反応や反響はどうだった?

おさ 「カフェノトリコ」のベーグルは米粉を少し入れることで独特のモチモチ感が出るのと、他ではあまり使われていない「白神こだま酵母」と、国産の小麦を使っているから、味わいも香りも普通のベーグルとは違うんだよね。

ベーグルを食べた事があるかどうかで反響は違ったりするんだけど、そうやってこだわって作っているから「美味しいね」って言ってくれる人は多かったよ。お客さんの食べた感想や意見を取り入れつつも、「自分が美味しいと思うベーグル」という根っこは大切にして、塩梅を微調整しているかな。

こだわりを語るおさ
こだわりを語るおさ

――今考えているベーグルのメニューは「あだち菜」の他にもあるの?

おさ 「あだち菜」の他には、プレーン、ブルーベリー、黒糖、ゆず、ごま、期間限定の夏みかんあたりかな。基本的には何種類か出すよ。それとは別に、シフォンケーキも出す予定だね。

――「あだち菜」を使ったベーグルと他のベーグルは、どんなところが1番違う?

おさ まずは、見た目が緑色っていうところかな。あとは、他のよりも粒々感がある。小松菜の存在を微かに感じながらも、青々しさやえぐみがない優しい味になるように、生地は試行錯誤したよ。それを、普通のオーブンでも焼くことはできるけど、「カフェノトリコ」では「スチームコンベクションオーブン」を使って焼いていくつもり。

足立区の小松菜ブランド「足立菜」を使ったベーグル(画像提供:カフェノトリコ)
足立区の小松菜ブランド「あだち菜」を使ったベーグル(画像提供:カフェノトリコ)

――「スチームコンベクションオーブン」は、普通のオーブンとはどう違うの?

おさ 「スチームコンベクションオーブン」を導入するのは、ベーグルを焼く以外にも、様々な調理にも使えるから。茶碗蒸しのような蒸し料理、焼魚やハンバーグのような焼き料理などに使えて汎用性があるし、お店の規模感的にもいろんな機材を入れるよりも、「スチームコンベクションオーブン」が1台あればなんでもできるから、導入を決めたよ。

――これまで培ってきた料理を作るための最強の調理器具みたいな感じだね。

一歩ずつ歩んできた飲食業界でのキャリア

――少し昔を振り返るけど、おさが飲食の世界に入ったのはいつ?

おさ 高校1年生の時、ファミレスでアルバイトをしたのが最初だね。当時はあまり飲食業界に興味はなくて、遊ぶお金を稼ぐために働いてたかな(笑)ただ、先輩も良い人だったし、当時は楽しかったよ。そのあとも飲食業界で働き続けて、大学時代にバイトしていたチェーンの焼肉屋では、店長代理としてお店の回し方を勉強できたのは良かったかな。どの時も人間関係にも恵まれて楽しく働けてたから、良い思い出だね。

取材時も店内のカウンターに関する打ち合わせに余念がない
取材時も店内のカウンターに関する打ち合わせに余念がない

――飲食の道でずっとやっていくんだって思ったのはいつから?

おさ 就活で悩んだ時期があったんだけど、何をやっていきたいのかを考えたときに、飲食店で働く事が自分に合ってるのかなって思い始めて。とりあえずは飲食の世界でやってみようと思って、当時アルバイトをしていた西麻布の韓国料理店に正社員として就職した事が、本格的に意識したキッカケかな。

そこから、飲食店で働く上で「自分のお店を持つ」という最終目的に向けて、何ができないといけないかを考えた時に「調理ができないと話にならないな」と思って、調理を学ぶために西麻布にある鶏料理店の「一歩」に移ったんだ。そこでは、3年目に料理長に昇格して、トータルで10年ぐらい働いたよ。鶏を1頭まるごと捌いたり、鍋に入れるためのミンチにしたり、鶏を使った日替わり定食を作ったり。鶏肉はもちろん、それ以外でも調理に関することは全部やったかな。

「O・S・A」にて

――「一歩」を辞めて起業準備をしてる時に、足立区東伊興のおにぎり屋「にぎりむすび」の商品プランナーと、同地で夜営業する居酒屋「O・S・A」の1人店主を始めたんだよね?

おさ 「一歩」を辞めてすぐに自分のお店で起業しようと考えていたけど、コロナ禍の影響で情勢的に難しくなったんだよね。その時にちょうど、「にぎりむすび」の商品プランナーの話があって。そこから「にぎりむすびは夜に営業しない」って聞いたから、「それだったら、自分が資本金をあまり使わないでもできるかな」と思ってスタートしたのが「O・S・A」だね。

――「O・S・A」は地域の中ではなくてはならないお店になっていると思うんだけど、どういうコンセプトでやっているの?

おさ 「おばんざいを肴にお酒を楽しめるお店」っていうコンセプトでやってるよ。「にぎりむすび」で副菜を提供するんだったら惣菜がいっぱい必要になるから、その惣菜を担保しておいて、夜の営業にも活かす事にした。そうすれば食品ロスが少なくなるし、惣菜を作っておいてそれを活かせる形にしておけば、自分のお店を開業した後も次の人に任せやすいからね。

――なるほど。目の前の条件を組み合わせていったら「O・S・A」という答えになったんだね。そして、おさが満を持してやりたい事を始めるのが「カフェノトリコ」なのか。

「カフェノトリコ」が目指す“地域の日常に溶けむお店”

店内工事を見守るおさ

――そんな中で始まる「カフェノトリコ」だけど、コンセプトというか「こういうお店にしたい!」っていう想いは何かある?

おさ 朝はモーニング、昼はランチ、夜はお酒が飲めて、「1日中楽しめるお店」になるように居心地を1番重視していこうと思ってる。お店の構造上、縦長で入りにくさがあるかもしれないけど、気軽に入ってもらえるようなお店にしていきたいな。

――「カフェノトリコ」に来てくれる地域のお客さんにはどうなってほしい?

おさ お客さんにとって、憩いの場、コミュニティの場、ちょっと寄れる場、仕事ができる場といかようにも使ってもらえると良いなって思うよ。商店街にあるから、買い物のついでに寄ってもらったりね。「カフェノトリコ」が地域の日常に溶け込んでくれたらいいな。

5月オープン予定の「カフェノトリコ」
5月オープン予定の「カフェノトリコ」

――最後に、今回「カフェノトリコ」のオープンに向けて、「スチームコンベクションオーブン」の購入を募るクラウドファンディングにチャレンジするけど、そこはどうかな?

おさ 今回のクラウドファンディングは「カフェノトリコ」に来店するための、ちょっとしたキッカケになれば嬉しいかな。だから、お金をたくさん支援してもらいたいとはあまり思っていなくて。例えば、クラウドファンディングで回数券を買って、これがあれば何回かお店に行けるなって、オープンを楽しみにしてもらいながら応援してもらえると嬉しいね。

カフェノトリコ
住所
足立区入谷2丁目25-22
Instagram
https://www.instagram.com/cafe_no_toriko/

「和尚代筆」取材者の大島俊映

取材=大島俊映(トネリライナーノーツ 編集長)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/oshima/

編集補佐=しまいしほみ(トネリライナーノーツ アシスタント)
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/shimai/

撮影=山本陸
トネリライナーノーツ記事
https://tonerilinernotes.com/tag/riku/