涙の塩気を、にぎりむすびに!「ギリギリにぎりむすび」7口目

日暮里舎人ライナー「舎人駅」より徒歩圏内、東伊興の寺町の一角で、ママとベビー・キッズの「コミュニティKoen」代表の山本亜紀子さんが「ママとキッズのサードプレイス」という親子の居場所作りにチャレンジしています。
そのプロジェクトが進む中、新たな物語が産声を上げました。
物語の名は、にぎりむすび。
この連載は、トネリライナーノーツ編集長で、「ママとキッズのサードプレイス」プロジェクトにも関わる大島俊映が、「にぎりむすび」の物語を現在進行形でお届けするドキュメント「ギリギリにぎりむすび」です。
7口目は「涙の塩気を、にぎりむすびに!」をお届けします。

「ママとキッズのサードプレイス」についてはこちら

おさの作業を見守るすじこさん。この2日後に…
おさの作業を見守るすじこさん。この2日後に…

2日後に泣く、すじこさん

前回の6口目でもお伝えしたように、にぎりむすびのオープンは3月31日、ついに2週間を切った。現時点でこの原稿の締切りはすでに数日過ぎているが、女将の山本亜紀子さん(以下、すじこさん)をはじめとした事業メンバーたちはバタバタと忙しくしていて、もはや誰もそんな事を気にしていない。僕だって忙しいから、仮に事業メンバーのLINEグループでメッセージが既読スルーされても、気にとめないだろう。

みなさんの後学のためにお伝えすると、既読スルーをされた時に、やってはいけない対応が2つある。1つは「なぜ返信してくれないのか」という理由を問いただすメッセージを送る事。そして、もう1つは、電話をする事。とりわけ、電話なんてものは、不用意にしてはいけない。電話に出なかったらより気になってしまうし、出たら出たで、電話口で相手が泣くかもしれないからだ。

さて、話を始めよう。「始まってなかったんかい!」というツッコミは無用だ。今回は「すじこさんが電話口で泣いてしまって、そこから力強く立ち上がる」という物語を描く。ちなみに、「既読スルーされた僕が、すじこさんに電話をした」という話ではないので、念のために。

僕のメッセージを既読スルーする事もある、すじこさん
僕のメッセージを既読スルーする事もある、すじこさん

すじこさんの涙の伏線は、2月某日の夕方。その日は、にぎりむすびがオープンする足立区東伊興の「コミュニティKoenてらまちハウス(注1)」に、それぞれの業務に関する契約を結ぶため、すじこさん・営業プランナーの川野礼さん(以下、たらこさん)・商品プランナーの長村孝則さん(以下、おさ)・「ギリギリにぎりむすび」執筆者(兼、事業プランナー)の僕という事業メンバーが集まった。

契約書に署名したこの時間は「にぎりむすびを成功させて、それぞれが地域で実現したい目標のための土台にするんだ!」という希望に満ちていたように思う。30分ほどでそれを終えると、たらこさんと僕は営業に関する打ち合わせを始め、すじこさんとおさは「にぎり娘(にぎりむすびの女性スタッフ)」たちとの初めての研修に戻っていった。

それから1時間、たらこさんと僕は打ち合わせを終えて、帰り際に研修の場に立ち寄ると、「にぎり娘」たちに交じって、すじこさんがおにぎりを握っていた。「にぎり娘」たちが手際良くおにぎりを握っているのに対して、すじこさんは自信なさげなスローな手つき。僕は内心の不安をその場では出さずに、千円を支払って、たらこさんと共に、すじこさんが握ったおにぎりを持ち帰った。

にぎり娘の研修を見学するたらこさん
おにぎりを握るすじこさんの様子を見学するたらこさん

涙の塩気を、にぎりむすびに!

このプロジェクトが始まってから、僕はおにぎりを食べまくってきた。元々好きだった代々木や表参道にある「田んぼ」や、浅草にあって東京で1番歴史があるおにぎり専門店「宿六」、そして、飲食関係者やグルメな友人たちが絶賛して止まない大塚の「ぼんご」。ここに挙げたのは、美味しいお店ばかりだが、そうでもないおにぎりも、コンビニのおにぎりも食べ続けている。

余談だが、最近食べたセブンイレブンの「大きな手巻おにぎり 肉そぼろ卵黄」は、「ぼんご」の名作おにぎりである「トッピング 肉そぼろ&卵黄醤油漬け」に味の方向性が酷似していて、巨大資本の闘い方を垣間見た気がする。そんな大手企業のコンビニと、にぎりむすびは同じ土俵で闘うのだ。

前置きが長くなってしまった。家に持ち帰ったすじこさんの握ったおにぎりは、美味しくなかった。あえて味の描写は控えるけれど、これまでに買った、どのおにぎりよりも。昨年9月におにぎり屋を提案してから、この時点で5ヶ月余り。おちゃらけなしで、失敗の2文字が目の前に迫っている気がした。

にぎり娘たちの研修を見守るおさは真剣そのもの
「にぎり娘」たちの研修を見守るおさは真剣そのもの

すじこさんのおにぎりを食べた翌日は、どう連絡したらいいか分からず、結局は2日後の昼に電話する事になった。正直、自分がすじこさんになんと切り出したかは覚えていない。「美味しくなかった」と言ったのか、「このままだとお店はすぐに潰れる」と言ったのか。

気が付くと、電話口で、すじこさんは泣いていた。号泣と言って差し支えないほどに。10分間ほど、ずっと泣き続けていた。

少し落ち着いてから、すじこさんは話し始めた。
「てらまちハウスで実現したい事も、にぎりむすびの事も、コミュニティKoenの事も、やるべき事が多すぎて、全てが中途半端になっている」
「にぎりむすびをやるのは自分で決めたけど、自分が最初からやりたかったのは子どもの見守りとかママたちの居場所作りとかだから、自主練も最近までできていなかった」
「にぎりむすびが、てらまちハウスにあるのは望んでいる事だけど、事業をやった事も飲食店を経営した事もないから、収益を上げられるかが不安」
「母親として家族との時間も必要だし、仕事だけをすればいい訳ではない」

僕はそれらの話を聞いて、にぎりむすびの進め方について、すじこさんと話し合った。そして、おにぎりを握る練習をするのは「にぎり娘」たちに完全に任せたらどうか、と提案した。にぎりむすびのオープン後、すじこさんがおにぎりを握るのは、緊急時のみの予定だからだ。しかし、すじこさんは、こう言ってきた。
「にぎり娘たちは本当に頑張ってくれているし、私がしっかり練習をして、その姿を見せる事で引っ張っていきたい」

すじこさんが信頼を寄せる「にぎり娘」たち
すじこさんが信頼を寄せる「にぎり娘」たち

すじこさんが電話口で泣いた翌日の夜、音声アプリを使って、すじこさんとおさと僕とで電話ミーティングを開いた。そこでは、おにぎりの「にぎりむすび」や豚汁の「ベジベジとん汁」のこだわりを、すじこさんの言葉を元に、3人で言語化して共有していった。

「にぎりむすび」のこだわり
①コンビニでは買えない安全・安心のおにぎりを作って、味も超える。
②おにぎりに適したお米(選定中)を、おにぎりに適した炊き方で炊いて、おにぎりに適した握り方で握る。
③おにぎりの具は、商品プランナーのおさによる味付けを、そのまま届ける。

「ベジベジとん汁」のこだわり
①地元の野菜卸「花鮮(注2)」から仕入れた新鮮な野菜たちを、それぞれに最適な下処理をして、その持ち味を活かす。
②丁寧に引いた出汁に、こだわりの味噌(信州味噌の予定)を溶いて、味噌汁として高い完成度に仕上げる。
③地元の肉屋さんから程よく脂が乗った豚肉を仕入れて、豚汁自体が栄養バランスの摂れた「おかず」になるようにする。

この電話ミーティングは3時間に及んだが、電話を切る時のすじこさんの声は晴れやかだったように思う。目指すべき方向性が決まって、覚悟が決まったというか、迷いがなくなったというか。

最後に、読者のみなさんにお願いを1つ。にぎりむすびが3月31日にオープンしたら、ぜひ食べに来てほしい。その時に、おにぎりの「にぎりむすび」に、絶妙な塩気がきいているかを確かめてほしい。もし美味しければ、それは、すじこさんが流した涙のおかげかもしれない。

注1)「コミュニティKoenてらまちハウス」についてはこちら

注2)「花鮮」についてはこちら

▼にぎりむすび関連イベント
オープン記念イベント
未定

にぎりむすび
住所
東京都足立区東伊興4-14-4
ホームページ
準備中
Instagram
https://instagram.com/nigirimusubi2021
Twitter(ギリギリにぎりむすび)
https://twitter.com/nigirimusubi

「ギリギリにぎりむすび」執筆者の大島俊映
「ギリギリにぎりむすび」執筆者の大島俊映

文=大島俊映(「トネリライナーノーツ」編集長)
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トネリライナーノーツ記事
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